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研究機関からの情報漏洩対策①

更新日:

 6月15日に、国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下、産総研)の中国籍研究員が、『不正競争防止法』違反の容疑で警視庁公安部に逮捕され、7月5日に起訴されました。

 

 逮捕の一報を受けてから私の立場(科学技術政策担当の内閣府特命担当大臣)で可能な範囲で行った初動対応については、去る7月11日に書かせていただきました。

 

 国立研究開発法人のみならず、大学、大学院、民間企業の研究機関でも、機微・重要情報流出防止の為に、マネジメント層の方々にご留意いただきたいことが幾つかあり、今日と明日で、順次、書いてみます。

 

 産総研については、むしろ同研究所のチェック体制が機能していたと言えるケースでした。中国籍研究員の不審な行動に疑問を抱いた産総研が、警視庁と協力して、長期にわたって内々に注意深く調査を続けてきた結果、逮捕に至ったのです。

 当該研究員は、中国在住の親の介護を理由に何度も出入国を繰り返していたということですから、途中で調査に気付かれ出国・逃亡されてしまっていたら、身柄の確保はできませんでした。

 

 日本には、国立研究開発法人が27法人もあります。

 それらの法人を所管する官庁は、経済産業省、総務省、文部科学省、国土交通省、農林水産省、厚生労働省、環境省です。

 27の国立研究開発法人の常勤職員数は、合計で約2万6000人。そのうち、外国籍の常勤職員数は、26法人に1194人です(2023年6月時点の確認人数)。

 

 中国籍研究員の逮捕以降、多くの皆様から、「国立研究開発法人で外国人研究員を雇わないようにする法律は作れないのですか?」という旨のご質問をいただきました。

 

 例えば、『外務公務員法』(外交官等)は、日本国籍に限定しています。

 『国家公務員法』には、国籍要件はありませんが、『人事院規則』で「日本の国籍を有しない者」は採用試験を受けられないこととなっていますので、外国人は日本の国家公務員にはなれません。

 しかし、『独立行政法人通則法』には、国籍要件はありません。

 

 日本の研究開発力の強化の為には、卓越した外国人研究員の能力の活用も必要です。日本人研究員に採用を限定すると、欧米の友好国をはじめ海外の優秀な研究員の招聘や共同研究もできなくなってしまいます。

 だからこそ、各研究機関において、情報セキュリティの強化も含め、重要情報をしっかり守れる体制を整え、取組を徹底していただかなくてはならないのです。

 

 先ずは、マネジメント層の皆様には、現行法の周知と徹底にご尽力を賜りたいと存じます。

 

 27の国立研究開発法人のいわゆる『設置法』は、「秘密保持義務」と「罰則」を規定しています。

 例えば、中国籍研究員が逮捕された産総研の設置法である『国立研究開発法人産業技術総合研究所法』の第10条の2は、「研究所の役員及び職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らし、又は盗用してはならない。その職を退いた後も、同様とする」と規定しています。

 同法第14条は、「第10条の2の規定に違反して秘密を漏らし、又は盗用した者は、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する」と規定しています。

 国立研究開発法人によって、法律に定める罰金の額は異なります。

 

 各国立研究開発法人のマネジメント層の方々が、採用後に、日本人も外国人も含めて全ての職員に『設置法』の規定を徹底して理解してもらう取組を実施して下さることは、有効だと思います。

 

 また、民間企業の方々にも馴染みが深い『不正競争防止法』は、「営業秘密の侵害罪」と「罰則」を規定しています。

 「営業秘密侵害罪」は、有用な「技術上」又は「営業上」の情報の侵害です。刑事罰は、「10年以下の懲役又は2000万円以下(海外使用は3000万円以下)の罰金」です。

 

 ただし、『不正競争防止法』の適用には、「営業秘密」の要件を満たす必要があります。「秘密として管理されていること」「有用な技術や営業上の情報であること」「公然と知られていないこと」(保有者の管理下以外では入手できないこと)です。

 各法人のマネジメント層の皆様には、重要技術について、同法の要件を満たす管理体制を実施していただくことが必要だと考えます。

 

 明日は、既に政府が決定している対応方針の徹底について、書かせていただきます。

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