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日本の国防③:「積極防御能力」の保有に必要なこと

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 「積極防御能力」(Active Defense)を保有する為に必要なことは、幾つもあると思いますが、私は、相手の「指揮統制機能の無力化」が現実的な手段だと考えています。

 

 既に、現在の『防衛大綱』(「平成31年度以降に係る防衛計画の大綱」)においても、その方向性は示されています。

 

  • 「宇宙領域」では、「相手方の指揮統制・情報通信を妨げる能力」。
  • 「サイバー領域」では、「相手方によるサイバー空間の利用を妨げる能力」。
  • 「電磁波領域」では、「わが国に対する侵攻を企図する相手方のレーダーや通信等を無力化するための能力」。

 これらの能力強化を図ることとされています。

 

 「Kill Chain」(目標探知・追尾⇒攻撃命令⇒目標破壊までの一連の機能)の全体を対象に、相手のどの機能を無力化すればKill Chainを断ち切り、ミサイル発射を阻止できるかということを考えると、「作戦指揮中枢」や「通信ネットワーク」は、無力化の重要な対象目標になります。

 ただし、日本が先に無力化された場合には、絶望的な状況を覚悟しなければなりません。

 

 米国の宇宙軍は、2020年3月に、「地上配置型衛星通信妨害装置」の運用を発表しました。

 

 米国の空軍は、2019年5月に、高出力マイクロ波を照射して、地下司令部や建物内のコンピュータや通信機など電子機器のみを恒久的に破壊できるHPM兵器(高出力マイクロ波を発生させる兵器)を搭載した「JASSM‐ER」という射程700㎞から1000㎞の空対地ミサイルの保有を発表しました。

 

 宇宙分野や電磁波分野については、日本は高い技術を保有していますので、民間企業や学術機関の技術や知見を安全保障に活用できたなら、人命を奪うことなく相手の「指揮統制機能の無力化」を行うことは可能になると考えます。

 

 相手の指揮統制通信の機能を無力化し妨害する為には、サイバー攻撃も有効な手段ですが、残念ながら日本では、法整備の壁が高いと思います。

 『電気通信事業法』(通信の秘密)や、『不正アクセス禁止法』(許可なく相手の設備に入れない)、『刑法』の「ウイルス作成罪」(学術目的等は例外)について、「国防上、必要な場合」の例外規定を置くなどの方法が考えられますが、内閣が1つ吹っ飛ぶくらい反対意見が多いのだろうと想像します。

 

 サイバー領域では、国家の他にも様々な行為主体が存在し、特定が難しく、「敵」が顕在化した時には、既に重大な被害を受けてしまっている可能性が高いと思います。

 サイバー空間の諜報によって「潜在的な敵」を普段から特定しておき、侵攻兆候を把握すると直ちに「妨害・無力化」を実行することが、被害を防ぐ為に必須です。

 

 防衛関連施設への攻撃のみならず、医療、電力、ガス、水道、航空、空港、鉄道、物流、情報通信、石油、化学、金融、クレジット、行政など重要インフラとされる分野への攻撃に加え、今後は自動運転車への攻撃にも備えることが、国民の皆様の命と財産を守る上で重要です。

 フェイクニュースによる国内外の世論操作も、戦争の1形態になってきました。

 

 反対意見は多いのかもしれませんが、3年前(2019年5月10日)に自民党サイバーセキュリティ対策本部(高市早苗本部長)から内閣に提言した通り、サイバー空間の諜報、攻撃者の特定、サイバー空間上の反撃を可能にする「法制度整備」と、「サイバー防御に一元的な権限と責任を持つ行政組織の設置」が必要だという考えは変わっていません。

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