コラム

  1. TOP
  2. コラム
  3. 9期目の永田町から 令和3年11月~
  4. ロシアのウクライナ侵略④:「台湾危機」を回避する為に

ロシアのウクライナ侵略④:「台湾危機」を回避する為に

更新日:

 ロシアのウクライナ侵略開始以降、私は、講演や番組出演の機会の度に、ロシアとロシアの軍事行動を支援したベラルーシに対しては、「暴挙には高い代償が伴うことを示して戦闘続行を断念させる為に、強力な制裁措置が必要だ」という意見を述べてきました。

 

 これは、中国へのメッセージにもなるからです。

 日本政府は、「台湾危機の可能性」を十分念頭に置いて、重大な覚悟をもって、現下の状況に対応しなければならないと考えます。

 

 昨今、中国とロシアの接近は、一層顕著となっています。

 中国の人権状況に世界中が異を唱え、各国が北京五輪への政府代表の派遣を見送る中、ウクライナ情勢が緊迫度を増す中、北京で中露の首脳が固い握手を交わしたことは、記憶に新しいところです。

 

 中国がロシアを支援し、世界各国が実施している経済制裁を無効化する抜け道になってしまう可能性も、警戒されています。

 

 ここ数年、我が国の周辺空域では、中露両国の空軍が編隊を組んで「合同パトロール」と称する飛行を繰り返しています。

 昨年10月にも、中露両国の海軍の合同艦隊が津軽海峡と大隅海峡を通過し、日本を一周する共同航行を行いました。

 

 更に、中国とロシアの共通項を幾つか挙げてみます。

 

  • 強大な権限を持つ国家元首が長期にわたり君臨する「専制主義」であること。
  • 「力による現状変更」の試みを繰り返し、周辺国・地域に脅威を与えていること。
  • 国連安保理の「拒否権」を保有し、国際秩序や国際法を無力化できること。
  • 「核兵器」を保持していること。
  • 「自由」「民主主義」「人権」「法の支配」といった普遍的価値を危機に晒していること。

 

 全世界の目が欧州に向く今、日本は、最悪の事態への備えとして「台湾危機」の回避を目指して、様々な対応を決めていかなければなりません。

 

 中台の軍事バランスは、中国が公表している国防費だけでも、2022年度予算で比較すれば中国が台湾の約14倍になっており、昨年には11倍でしたから、その差は年々拡大しています。

 台湾当局自ら、「中国は既に台湾侵攻能力を備えている」と見ており、中台間で何が起こっても不思議ではありません。

 

 ロシアのウクライナ侵略は、非正規軍の活動、サイバー戦、情報戦などを組み合わせたハイブリッド戦により徐々に開始されました。

 台湾国防部発表の2021年『国防報告書』によると、中国はサイバー戦やフェイクニュースの散布といった手段によって、「戦わずして台湾を奪取する」ことを企てていると分析しています。「台湾の奪取」は、既に始まっていると言えるのかもしれません。

 

 台湾は、与那国島から約110㎞の位置にあり、まさに日本の目と鼻の先です。更に、台湾南側のバシー海峡は、日本が輸入する原油の9割、天然ガスの6割が通過する重要な生命線です。

 

 中国とロシアの接近、中国もロシアも日本の隣国であること、ロシアの軍事基地が国後島と択捉島に在ることからも、今回のロシアの暴挙は、決して「対岸の火事」でも「遠い欧州の出来事」でもありません。

 

 中国は今、ロシアによる主権国家侵略の行く末を、固唾を飲んで見守っていることでしょう。

 

 日本が国際社会と結束して強力な制裁を履行し続け、ロシアの侵略行為を失敗に終わらせることこそが、日本の大切な友人である台湾への戦火を遠ざけ、日本自身の危機回避の為にも、正しい道だと考えます。

 

 その上で、常に「最悪の事態を想定した備え」が必要です。

 例えば、台湾在留邦人の安全確保プランの策定、日米台の連絡体制の構築(ホットライン設置など)、台湾有事の際の日米共同作戦計画の構築、日本自身の防衛力強化など、備えとして検討しておくべきことは多々あります。

 

 米国内に「台湾防衛から手を引くべきだ」という意見もあることには留意しなくてはなりませんし、既に「西太平洋に限った軍事力」では米軍よりも中国軍の方が大きくなっています。

 前にも書きましたが、「行き過ぎた他者依存」ではなく、「日本自身の防衛力」を強化する必要性は高くなっています。

前のページへ戻る

  • 自民党
  • 自民党奈良県連
  • リンク集