予算委員会質疑報告④:台湾有事への考え方
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○高市委員
さて、総理は、12月6日の所信表明演説の際、大事なのは最悪の事態を想定することですとおっしゃった上で、ジョン・F・ケネディ元米国大統領の、屋根を修理するなら日が照っているうちに限るという言葉を引用されました。
感染症対策に限らず、日本が直面する可能性のある最悪の事態を想定し、先手先手で構えを講じ、そしてリスクを最小化しておくということは、これは危機管理の要諦でございます。総理のお考えに心から賛同いたします。
そこで、リスクの最小化という観点から幾つか伺います。
補正予算案には、変化する国際情勢に迅速に対応し、国家の安全保障をしっかりと確保するための経費として7,139億円が計上されました。総理がおっしゃった、大事なのは最悪の事態を想定することですという理念が国防力の強化にも生かされるものと高く評価をいたします。
12月1日、安倍晋三元総理が、台湾有事、それは日本有事です、すなわち日米同盟の有事でもありますと発言をされました。この発言に対して、中国外務省の報道官が、でたらめな発言だと反発しただけではなくて、中国の外務次官補が日本大使を呼んで、中国の内政に対する粗暴な干渉であり、主権に対する露骨な挑発だと抗議したと伝えられています。
防衛大臣に伺います。
台湾有事は日本有事という安倍元総理の御見解について、安全保障の観点から正しい認識だとお考えになりますか。
○岸国務大臣
日本の最西端の与那国島まで参りますと、台湾はそこから110キロのところにあります。まさに目と鼻の先に存在をしております。
台湾は、日本にとって、自由や民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的な価値を共有する極めて重要なパートナーであり、また大切な友人でもあります。
御指摘の安倍元総理の御発言について政府としてコメントすることは差し控えますが、台湾をめぐる情勢の安定は、南西地域を含む我が国の安全保障にとって重要であると考えています。我が国として、台湾をめぐる問題については、対話により平和的に解決されるべきと期待する立場であります。台湾海峡の平和と安定の重要性については、これは我が国のみならず、日米間あるいは日・EU、G7首脳会談においても認識を共有しているところであります。
近年、中国が軍事力の強化を急速に進める中で、中台の軍事バランスは全体として中国側に大きく有利な方向に変化をし、その差は年々拡大をしています。また、中国軍機による台湾の南西地域への度重なる進入を含め、中国は台湾周辺における活動を更に活発化させておりまして、我が国として、防衛省としても、引き続き関連動向については注視をしてまいりたいと考えております。
○高市委員
外務大臣、御出張、お疲れさまでございました。
日本の閣僚を含む政治家が台湾有事、つまり中台有事を想定した発言をすることや、日本政府が中台有事への備えを進めることというのは、中国の内政に対する干渉だとお考えでしょうか。
○林国務大臣
台湾海峡の平和と安定、これは、日本の安全保障はもとより、国際社会の安定にとっても重要でございまして、また、台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待するというのが日本の政府の一貫した立場でございます。
政府としては、このような日本のみならず国際社会にとっても重要な問題について、正当な関心を表明すること自体がいわゆる内政干渉に当たるとは考えておらないわけでございます。
台湾海峡の平和と安定が重要であるという認識は国際社会においても高まっておりまして、四月の菅総理訪米時に発出した日米共同声明や、六月のG7首脳会合でも同様の認識が示されているということはこの証左でございまして、現政権も当然に引き継いでいるものでございます。
そうした認識を踏まえて、私自身、11月の18日、日中外相電話会談において、王毅国務委員に対して直接この点に対して提起をしております。また、日本の政治家による御発言に関連する中国側からの不当な申入れに対しても、外交ルートにおいてしっかりと反論させているところでございます。
また、11月13日のブリンケン国務長官との電話会談や、今般のG7外相会合の機会に行った日米外相会談でも、台湾海峡の平和と安定の問題をブリンケン長官と議論させていただいたところでございます。
いずれにいたしましても、日本を取り巻く環境が一層厳しさを増す中、政府として、いかなる事態に対しても対応できるよう、平素からの体制の整備を含め、万全を期していくということは当然であると考えております。
○高市委員
分かりました。
先ほど防衛大臣がおっしゃいましたとおり、台湾は与那国島から約百十キロという近距離にあります。また、台湾南側のバシー海峡というのは、これは、日本の原油の九割、また天然ガスの六割の輸入を依存する重要なシーレーンでございますので、台湾の平和と安定は日本の安全保障に直結をしています。
台湾国防部によりますと、昨年1年間で、延べ380機の中国軍機が台湾の南西空域に進入しています。最近では、10月1日から4日の4日間にかけて、延べ149機もの中国軍機が台湾南西空域に進入しました。米国は、中国の攻撃的な行動が緊張を高めていると牽制しました。中国は、台湾独立を防ぐため、反国家分裂法により武力行使を放棄しない方針を明記しております。
今年の3月に、米軍のデービッドソン前インド太平洋軍司令官が、中国の台湾に対する脅威は今後6年以内に明らかになると発言して大きな注目を集めました。その後、軍事侵攻の時期については様々な見方が専門家からも示されておりますが、中国の台湾侵攻能力が加速しているという認識は共通しております。