【経済安全保障】
1.『経済安全保障推進法』(2022年5月12日成立)に基づく「サプライチェーンの強靱化」
(経緯)
2022年9月30日 『特定重要物資の安定的な供給の確保に関する基本指針』閣議決定
2022年12月23日 半導体、蓄電池、肥料、抗菌薬など11物資を「特定重要物資」に指定する『政令』を施行(閣議決定は12月20日)
2023年2月17日 第3回経済安全保障重点課題検討会議
2023年4月14日以降 計53件の「供給確保計画」を認定(8月3日現在)
(概要)
- グローバリゼーションの進展を背景とした供給網の多様化が進む中で、各国で供給ショックに対する脆弱性が増大している。国民の生命、生活や経済上重要な物資を他国に依存した場合、他国に由来する供給不足時に、我が国に重大な影響が生じる恐れがある。
- 『経済安全保障推進法』は、国民の生存や国民生活・経済活動にとって重要であるなどの4つの要件を満たす物資を「特定重要物資」に指定し、サプライチェーンの強靱化を図る制度を設けている。
- 2022年12月23日、取組の第一弾として、半導体や蓄電池、肥料、抗菌薬など11の物資を「特定重要物資」に指定する政令を施行した。
- 所要経費として、2022年12月2日に成立した「令和4年度第2次補正予算」で、計1兆358億円が措置された。
- 2023年4月時点で、物資ごとに所管大臣が定める『安定供給確保のための取組方針』を踏まえ、民間事業者がサプライチェーン強靱化の計画を作成し、物資所管大臣の認定を受ける段階。第1号として、経済産業大臣が4月14日に東京大学によるクラウドプログラムの安定供給確保のための計画を認定し、4月28日には半導体の安定供給確保のための計画を2件、蓄電池の安定供給確保のための計画を8件認定した。
- 2023年4月14日以降、抗菌薬、肥料、工作機械・産業用ロボット、半導体、蓄電池、クラウドプログラム、船舶の部品の分野における安定供給確保のための計画が、計53件認定されている。(直近の認定は2023年7月28日)
- 国民生活や経済活動を支える重要な産業を支えるリスクは絶えず点検が必要であり、2023年2月17日に開催した「第3回経済安全保障重点課題検討会議」において、高市早苗大臣から、今後も、重要な物資のリスク点検(サプライチェーン調査)等を実施していくことを関係省庁局長に対して要請。
- 11の特定重要物資の関連業種については、『外為法』においても投資審査の対象に追加した(改正告示を4月24日に公布・施行)。
2.『経済安全保障推進法』に基づく「経済安全保障重要技術育成プログラム(K Program)」の推進
(経緯)
2022年9月16日 「経済安全保障推進会議・統合イノベーション戦略推進会議合同会議」において『研究開発ビジョン(第一次)』を決定
2022年9月30日 『特定重要技術の研究開発の促進及びその成果の適切な活用に関する基本指針』を閣議決定
2022年10月~2023年3月 研究開発構想を順次JST、NEDOに提示
2022年12月5日 JST、NEDOが研究開発構想に基づく公募開始
2023年2月8日 「経済安全保障重要技術育成プログラムに係るプログラム会議(第4回)」において、今後の『研究開発ビジョン』の策定に向けた議論のキックオフ
2023年3月27日 プログラムとして最初の採択公表(NEDO・3件)
2023年4月26日 「第5回プログラム会議」の開催(今後の検討プロセス等)
2023年5月15日 「第6回プログラム会議」の開催(WG委員の追加)
2023年8月1日 「第7回プログラム会議」の開催(『研究開発ビジョン(第二次)案』)
(概要)
- 科学技術・イノベーションが国家間の覇権争いの中核を占める中、先端的な重要技術の研究開発やその成果活用が我が国の国民生活や経済活動にとって重要であるのみならず、中長期的に我が国が国際社会で確固たる地位を確保し続ける上で必要不可欠。先端的な重要技術については、諸外国と伍する形で研究開発を進めることが求められている。
- このため、『経済安全保障推進法』は、将来の国民生活や経済活動の維持にとって重要なものとなり得る先端的な技術を「特定重要技術」に指定し、国が資金を確保して研究開発や成果の活用に向けて強力な支援を行う制度を設けている。
- 2022年9月に決定した『研究開発ビジョン(第一次)』に基づき、具体的な研究開発構想を作成し、2023年3月には、プログラムとして最初の3事業(宇宙・海洋領域)を採択した。2023年7月には、これら3事業について、『経済安全保障推進法』に基づく「指定基金協議会」を開催した。
- 今後も、『経済安全保障推進法』に基づく「指定基金協議会」を通じた国による伴走支援の実施を含め、着実に研究開発を推進していく。
- 2023年2月より、次の研究開発ビジョン策定に向けた議論を開始し、2023年4月には「プログラム会議」にて「検討プロセスの方向性」等を議論した。以降、『研究開発ビジョン(第二次)』の策定に向け、「研究開発ビジョンワーキンググループ」で合計8回の議論を重ね、2023年8月の「プログラム会議」において、『研究開発ビジョン(第二次)案』を取り纏めた。
- 尚、『K Program』のための経費として、2023年現在、計5,000億円を確保している。
- 2022年9月に決定した『研究開発ビジョン』に基づき、具体的な研究開発構想を作成し、2023年3月には、プログラムとして最初の3事業(宇宙・海洋領域)を採択した。
- 今後、『経済安全保障推進法』に基づく指定基金協議会を通じた国による伴走支援の実施を含め、着実に研究開発を推進していく。
- 2023年2月には、今後の研究開発ビジョン策定に向けた議論を開始し、「次」を見据えたビジョンの検討も開始している。
- K Programのための経費として、2023年5月現在、計5,000億円を確保している。
3.『経済安全保障推進法』に基づく「基幹インフラ役務の安定提供確保」の運用開始に向けた準備
(経緯)
2023年2月17日 「第3回経済安全保障重点課題検討会議」を開催
2023年4月28日 『特定妨害行為の防止による特定社会基盤役務の安定的な提供の確保に関する基本指針』を閣議決定
2023年8月1日 『経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律施行令の一部を改正する政令』を閣議決定
(概要)
- 基幹インフラ事業を規律するいわゆる『業法』は、外部から行われる妨害行為を未然に防止することを目的としておらず、設備導入、維持管理の委託といった通常の事業活動に起因するリスクに対して、十分な対応がとれない恐れがある。
- 『経済安全保障推進法』において、一定のインフラ事業者が設備の導入や維持管理の委託等を行う前に、政府が当該設備の導入等に伴うリスクを事前に審査し、リスクが大きければ低減・排除するべく、事業者に勧告・命令することができる仕組みを創設した。
- この制度は規制措置となるため、国家及び国民の安全と自由な経済活動のバランスに留意し、規制対象を真に必要なものに限定するとともに、事業者からの意見の実態等を十分に踏まえて制度を整備し、運用していくことが重要である。
- 2023年4月28日には『基本指針』を閣議決定し、「制度の基本的な考え方」「特定社会基盤事業者の指定基準」「特定重要設備を定めるに当たっての考え方」「届出事項や審査の考慮要素」などを示した。
- 2023年8月1日には、『経済安全保障推進法の施行令の一部を改正する政令』を閣議決定し、制度の対象として指定可能な事業者の事業の範囲として、『経済安全保障推進法』で定めた、電気、ガス、水道などの14事業のうち、役務の安定的な提供に支障が生じた場合に、国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれがあるものを、「特定社会基盤事業」として定めた。
- 2023年8月9日には、特定社会基盤事業者の指定基準や特定重要設備等を具体的に定める『省令』を、関係省庁において公布した。
- 今後、事前審査の対象となる「特定社会基盤事業」や「特定重要設備」等を『政省令』において具体的に定めていくこととなる。
- 2024年春頃を予定している制度の運用開始に向けて、事業者との意思疎通や連携を密にしつつ、引き続き入念に準備を進めていく。
- 加えて、国民生活や経済活動を支える重要な産業に関するリスクは絶えず点検が必要であり、2023年2月17日に開催した「第3回経済安全保障重点課題検討会議」において、重要なインフラのリスク点検等を実施していくことを関係省庁と確認した。
4.『経済安全保障推進法』に基づく「特許出願の非公開」の運用開始に向けた準備
(経緯)
2023年4月28日 『特許出願の非公開に関する基本指針』を閣議決定
2023年8月1日 『経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律施行令の一部を改正する政令』を閣議決定
(概要)
- 我が国の特許制度は、特許出願人に対して一定期間独占権を付与して発明の保護を図りつつ、特許出願された発明を一律に公開して、第三者による改良技術の開発促進、重複する研究開発の排除などにより発明の利用を図り、もって産業の発達に寄与することを基本としている。
- 他方、従来、安全保障上拡散すべきでない発明であってもその内容が公開されるため、拡散を懸念する発明者は特許出願を諦めざるを得ない状況にあった。諸外国では多くの国が安全保障上の理由で特許出願を非公開とする制度を有している。
- このため、『経済安全保障推進法』において、特許制度の基本的な枠組を維持しつつ、公にすることにより国家及び国民の安全を損なう事態を生ずる恐れが大きい発明が記載されている特許出願につき、出願公開等の手続を留保するとともに、その間、必要な情報保全措置を講じる制度を整備した。
- 保全指定をすると、産業の発達に様々な影響が生じ得るため、我が国の安全保障上極めて機微な発明であることを前提としつつ、経済活動やイノベーションへの影響も踏まえて、安全保障を確保するため合理的に必要と認められる限度において行わなければならない。また、特許出願人が手続を円滑に行うことができるように配慮することも必要である。
- 2023年4月28日には『基本指針』を閣議決定し、「非公開の対象となる発明の考え方」「保全審査の手続における留意点」などを示した。
-
2023年8月1日には、『経済安保推進法の施行令の一部を改正する政令』を閣議決定し、保全審査の対象となる、国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明が含まれ得る技術の分野を、「特定技術分野」として定めるとともに、非公開とした場合に産業の発達に及ぼす影響が大きいと認められる技術の分野、及びそのような技術の分野であっても審査に付すべき発明の要件(「付加要件」)を定めた。
- 今後、2024年春頃の制度運用開始に向けて、手続等の詳細を定める『府省令』を策定するとともに、引き続き、産業界等の関係者への周知広報等に努めていく。
5.「セキュリティ・クリアランス制度」の創設に向けた取組
(経緯)
2022年12月16日 『国家安全保障戦略』を閣議決定
2023年2月14日 「第4回経済安全保障推進会議」の開催
2023年2月17日 「第3回経済安全保障重点課題検討会議」の開催
2023年2月22日 「第1回経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度等に関する有識者会議」を開催。
(第2回:3月14日、第3回:3月27日、第4回:4月7日、第5回:4月25日、第6回:5月29日、第7回:中間論点整理6月6日)
(概要)
- 安全保障の概念が防衛や外交という伝統的な領域から経済・技術の分野に拡大している。安全保障のための情報能力の強化が一層重要となる中で、「セキュリティ・クリアランス」を含む情報保全の更なる強化を図る必要がある。
- 「セキュリティ・クリアランス制度」とは、重要な情報にアクセスする必要がある者に対して、政府による調査を実施して、信頼性を確認した上で、アクセス権を付与する「適性評価」の制度。
- 経済界からも、「セキュリティ・クリアランス制度」の創設について要望が寄せられている(経団連、経済同友会、各企業等)。
- 2023年2月14日の「第4回経済安全保障推進会議」において、岸田総理から、「経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度のニーズや論点等を専門的な見地から検討する有識者会議を立ち上げ、今後1年程度をめどに、可能な限り速やかに検討作業を進めること」との指示があった。
- これを受けて、2023年2月17日に開催した「第3回経済安全保障重点課題検討会議」において、政府内の情報保全のあり方の点検を実施していくことを確認。
- 2023年2月22日に「経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度等に関する有識者会議」を設置し、第1回会合を開催。
- 以後、有識者会議を精力的に開催し、民間企業から具体的な事例やニーズ等についてヒアリングを行い、制度設計に向けた議論をを行った。
- 日本企業が海外でのビジネスチャンスを拡大していく上でも、「セキュリティ・クリアランス制度」は有用である。
- 我が国に制度がないために日本企業が国際的なビジネスにおいて不利となっている現状(外国の政府調達・外国企業との取引・国際共同研究からの排除など)を改善していかなくてはならない。
- 「諸外国と機能的に同等性を持った制度設計」(海外でも信頼され通用する制度)とすることも重要であり、有識者会議の委員からの意見を踏まえつつ、スピード感を持って検討を行っていく。
- 有識者会議の委員の検討の結果は、2023年6月6日、『中間論点整理』という形で取り纏められた。
- 今後、『中間論点整理』を踏まえつつ、スピード感を持って、法整備に向けた検討を行っていく。
6.『安全・安心に関するシンクタンクの基本設計』の取りまとめ
(経緯)
2022年11月29日 「安全・安心に関するシンクタンク設立準備検討会」を開催
2023年4月7日 『安全・安心に関するシンクタンクの基本設計』を取りまとめ
(概要)
- 科学技術・イノベーションは、激化する国家間の覇権争いの中核を占め、安全・安心な社会の構築の観点から、サイバー空間におけるセキュリティの確保、新たな生物学的な脅威への対応、宇宙・海洋分野等の安全・安心への脅威への対応、また、これらの領域を横断するリスク・脅威・危機への対応としても、国家の命運を握る生命線となりつつある。
- 我が国においては、安全・安心の実現のための重要な諸課題に対応し、科学技術の多義性を踏まえつつ、総合的な安全保障の基盤となる科学技術力を強化する観点から、これまで、脅威等に対応する技術を「知る」、技術を「育てる」、育てた技術を社会実装し「生かす」、技術の流出を防ぎ「守る」ための様々な取組みを行ってきた。
- このうち「知る」については、国⺠生活、社会経済に対する脅威の動向の監視・観測・予測・分析、国内外の研究開発動向把握や人文・社会科学の知見も踏まえた課題分析を行う取組を充実するため、安全・安心に関する新たなシンクタンク機能の体制を構築することとしている。
- そこで、2022年11月から2023年3月にかけて、内閣府科学技術・イノベーション推進事務局において、有識者による「安全・安心に関するシンクタンク設立準備検討会」を開催し、
(1)
|
シンクタンクにおける当面の具体的な3つのミッション(①経済安全保障重要技術育成プログラムの運用に当たって必要な情報提供・助言、経済安全保障推進法に基づく調査研究の受託を可能とする調査・分析基盤の構築、②新たな分析手法の開発とOJTによる人材養成・能力開発、③国内外の関係機関との間の調査研究ネットワークの構築) |
(2) | シンクタンクの果たすべき機能・役割(情報収集、解析・分析、人材育成、ネットワーク構築) |
(3) |
シンクタンク組織の基本設計(組織形態、ガバナンス、財務など)を議論した。 |
- 2023年4月7日に、『安全・安心に関するシンクタンクの基本設計』を取りまとめた。
- 今後、この『基本設計』に基づき、安全・安心シンクタンクの設立準備を本格化していく。