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クリントン国務長官訪日と日本の安全保障

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 米国のクリントン国務長官は、最初の訪問国として選んだ日本での過密スケジュールをこなして、アジア各国訪問へと旅立っていかれました。
 短い滞在日数の中で、拉致被害者のご家族に会っていただいたことは、心強いことでした。

 2月に入ってから、日本では「北朝鮮が弾道ミサイルの発射準備を行っている」との報道が盛んになされていました。
 先週、北京で読んだ現地の英字紙にも、同様の記事が掲載されていました。

 クリントン国務長官のアジア歴訪は、6者協議への対応も含めて、アジア太平洋地域の安全保障体制確立を重視したものだったのだと思います。
 クリントン国務長官は、就任直後から、「北朝鮮の核に関する野望は深刻な懸念。北朝鮮は約束を遵守し、核兵器計画及び拡散活動を、完全に、かつ、検証可能な形で廃棄しなければならない」、「北朝鮮が義務を果たさない場合、我々は既に解除された制裁を速やかに再び課し、また、新たな制限を検討すべき」などの発言を行っており、北朝鮮に対しては厳しい姿勢で臨まれるものと思います。

 ところで、北朝鮮の弾道ミサイルについては、外務省や防衛省でも、「政府が接している具体的情報については、事柄の性質上コメントは差し控える」としながらも、積極的な情報収集を行っている様子です。
 実際は、「1~2ヶ月で発射できる状態」という報道に近い状況と理解した方が良いのでしょう。

 外交の専門家にお話を伺いますと、「米国の新政権と有利な交渉を行う為のパフォーマンス」という見方が強いようです。
 しかし、国際政治の鉄則は「NEBER SAY NEVER」ですから、不幸にして日本領土に向けてミサイルが発射される事態が発生した場合に、いかにして国民と国土を守り抜くのかという真摯な議論と備えは行っておくべきであると思っています。

 2006年7月5日に、北朝鮮が弾道ミサイルを6回発射しました。あの日は、午前3時30分頃が1度目の発射推定時刻で、落下推定時刻は、発射推定時刻10分後の3時40分頃とされました。
 情報は米軍からもたらされ、落下推定時刻の12分後に早期警戒情報発令、4時に官邸対策室設置、5時に分析会議開始、安全保障会議開催は、発射推定時刻の4時間後でした。
 
 午後の国防部会で、「追加的に発射される予兆はあるのか?」、「追加的に発射された場合、落下までに着弾点の予測をすることはできないのではないか?」と尋ねた私に、当時の防衛庁は「予兆は分からない」、「発射した後で軌道を計算しないと着弾点は分からず、10分間程度で着弾してしまうので、予測は難しい。米国からの情報も、着弾より先に来ることは稀だ」と回答していました。

 その後、PAC3の配備も進み、日本の防衛力は向上しているとは思いますが、今でも、発射情報入手、軌道計算、着弾点予測、迎撃という作業が着弾までの10分間以内で完了することは、物理的に難しいと考えざるを得ません。

 そこで数年前から議論されているのが、「相手が日本への攻撃に着手したと思われる発射準備段階で、相手国のミサイル基地に先制攻撃を行うことの可否」です。
 
 過去に石破防衛大臣が、国会答弁の中で、「敵の基地を叩くことは、自衛権(発動)3要件を充足した場合には、憲法の許容するところ」、「被害を受けてからでは遅く、恐れの段階では早過ぎる。どこをもって着手とするか」と述べておられます。

 自衛権発動3要件には「急迫不正の侵害」というものがあります。
この「急迫」という文言について、「相手から攻撃を受けた場合」と捉える方もおられますが、もしも核ミサイルであれば、第1撃を受けた後に対応するのでは遅すぎます。
 刑法第36条の「急迫」の意義に関する判例(昭和24年8月18日・最高裁第1小法廷)は参考になると思います。
 「刑法第36条にいわゆる急迫不正の侵害における『急迫』とは、法益の被害が間近に押し迫ったこと、すなわち法益侵害の危険が緊迫したことを意味するのであって、被害の現在性を意味するものではない」という判例です。

 急がなくてはならないのは、「相手が日本への攻撃に着手した」と判断する「基準」を明確にしておくことです。
 次に、ミサイル発射基地に先制攻撃を行う場合の具体的手順を詰めることです。例えば、敵地攻撃については米軍に全て依存するのか、日本の戦闘機部隊も作戦に加わるのかどうかということ。全面的に米軍に依存する場合は、日本の自衛隊との役割分担をどうするのか。

 残念ながら、現状で日本の戦闘機部隊が敵地攻撃をすることは不可能です。
 日本の戦闘機の敵地地攻撃能力は限定的にはあるのでしょうが、法律で「敵地攻撃任務」を付与されていない為、「航空総隊として組織的に敵地攻撃を行う能力」は無いとされています。
 攻撃目標を特定し、敵の防御網を無力化し、攻撃を行い、攻撃目標の破壊を確認し、不幸にして撃墜された搭乗員を救出する等の一連の作戦遂行には、装備品調達と十分な訓練が必要でしょう。
 法による明確な任務付与がされていない現状では、訓練もできません。危機が顕在化してから敵地攻撃を可能とするような政治判断を下したとしても、装備も訓練も為されていない状態では、実効的対応は不可能でしょう。

 現在の日本には、「ミサイル防衛で被害を局限化」しながら、「米軍の協力で敵基地を無力化」するという選択肢しかありませんが、私は、自衛の為の敵地攻撃能力は備えるべきだと考えます。
 「日本は専守防衛なのだから、敵地攻撃などとんでもない」と反対される国会議員もいらっしゃいますが、私は「専守防衛論」と「自衛の為の能力を備える」ことは分けて考えるべきだと思っています。

 過去から、「自衛隊をできるだけ使わないようにしよう」という考え方が根強くあり、日本は「実効性よりセカンドベストの手段」を選択し続けてきました。
 ソマリア沖の海賊対策にしても、日本関係船舶や日本人が被害にあっているにもかかわらず、民主党議員は「自衛隊を出すことには反対。海上保安庁なら良い」という主張をされています。
 しかし、危機に瀕した場合に、「国民の生命を守る為に最も有効な手段」を確実に使えるように準備すべき時に来ていると思います。

 「法整備・装備調達・訓練などの備えをすること」と「実際に武力行使をすること」は別物です。
 緊急事態に際して武力を行使してでも国民を守るかどうかについては、文民統制の日本では、国民の付託を受けた政治家が判断すべきことなのですから。

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