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いわゆる「派遣切り問題」への対応①

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 去る1月18日に、いわゆる「派遣切り問題」をテーマにした「新報道2001」に出演して以来、週末に選挙区で開いているミニ集会(少人数を対象にした国政報告と意見交換会)や自治会行事の懇談の席で、派遣労働問題についてのご意見をおっしゃる方が多くなりました。

 特に、正社員として工場で働いておられる方々からは、昨年末に別のテレビ番組が報じた「派遣を打ち切られた途端に、住む場所も食べるものも無い。残金は1000円足らず」といった内容について、疑問の声が多く上っていました。
 「景気が良い時には、複数の派遣会社に登録して給与の良いところを渡り歩いていたのだから、生活費の蓄えが全く無いということが不思議だ」、「昨年、当社に来ている派遣労働者に正社員にならないかと誘ったが、残業や休日出勤は嫌だと言って断られた」、「そもそも派遣労働者が派遣先のメーカーに直接文句を言うのは筋違いだ。本来、派遣会社が派遣先メーカーと契約しているのだから、派遣会社に対して次の派遣先探しや途中解約の損害賠償確保を求めるなら分かるが」、「行政がすぐに就職できる企業のリストを提示したのに、それを断って生活保護の申請をするのはおかしい」等々…。

 奈良県では、荒井知事のリーダーシップによって早々に、派遣打ち切りに遭った方々の為に、県の臨時職員ポストを用意し、数十戸の県営住宅も準備したものの、応募者が殆ど無かったことが県民に知られていることもあって、年末番組のインタビューに答えておられた派遣労働者の言い分に対しては厳しいご意見が多かったのかもしれません。

 先週末に帰県した折には、前記のようなご意見が圧倒的でしたが、現実には、「就職氷河期に学校を卒業して、派遣先企業の寮を転々としながら必死で働いてきたものの、突然の契約打ち切りで明日からの生活に困窮されている方々」も、少なからず居られることだと思います。

 派遣打ち切りと同時にいきなり路頭に迷ってしまうケースは、「派遣会社が雇用保険に入っていない(または、短期派遣で失業給付が受けられない)」、「解雇予告に必要な期間が守られていない」、「行政が用意した求人情報が必要な方に届いていない」といった不幸な事態が重なって発生しているのだろうと思います。
 
 実は、私が支部長を務める政党支部事務所でも、大手人材派遣会社から派遣されている女性に、情報処理業務等をお願いしています。

 派遣会社との「派遣契約書」では、派遣先である当事務所が負うべき責任が明確です。
【中途解約時の措置】として、「原則1ヶ月前までに、派遣元に文書で通知し、合意を得る」、「中途解除理由を明らかにする」、「派遣労働者の新たな就業機会確保・損害賠償について、十分協議の上、適切な善後処理方策を講ずる」と明記されています。

 また、派遣元である派遣会社側が派遣スタッフの生活設計に対する責務を果たしている旨も明確にされています。
「派遣通知書」には、「健康保険・厚生年金・雇用保険に加入済み」と書かれています。
 万が一、契約期間内に私が死亡したり落選したりで、支部事務所の閉鎖や中途解約が必要になったとしても、彼女には失業保険が給付されますから、正規雇用の支部職員同様、次の仕事が決定するまで一定期間の生活は営めるものと思います。     

 初めて派遣契約を検討した当初は、「月々の人件費としては、少し割高かな」とも思いましたが、交通費・健康保険・雇用保険・年金などのコストは派遣会社側負担ですし、有給休暇引当、優秀な人材を派遣する為の研修費や採用広告費を考えますと、派遣会社側の営業利益は僅かなものだと思います。
 また、派遣スタッフの方に従事していただいている業務には、党員名簿の修正など個人情報に触れる仕事もありますので、「情報流出などの事態に対してはしっかりと責任を負う」とする派遣会社側の姿勢にも、信頼を寄せています。

 何より、選挙の結果に左右される不安定な立場の私をトップとする小さな事務所が、優秀な人材を確保するには、大変な困難があります。幸い有能で人柄も良い方を派遣していただいているので、更新時期が来る度に、派遣スタッフ側に契約更新を断られたらどうしよう…とビクビクしているのが現状です。
 派遣労働者を活用している中小企業からも、優秀な人材確保、求人・採用手続きにかかるコスト負担軽減などのニーズに対応できるメリットの声を伺います。

 政府では、昨年の12月中に、「やむなく派遣契約を打ち切るものの引き続き住宅を提供した企業に対する家賃補助助成(1人あたり月額4万円~6万円)」、「解雇せずに職業訓練等で雇用維持した中小企業には賃金・手当ての5分の4(大企業は3分の2)を助成」、「雇用保険給付の無い方に最大186万円の貸付」、「年長フリーター・内定を取り消された学生・契約満了前の派遣労働者を正規雇用した中小企業への奨励金」、「職業訓練実施規模の拡大」、「住居確保支援」等の緊急対策を打ち出しました。

 加えて打つべき手は、「派遣会社と派遣先企業の契約内容の充実」と「契約遵守」の推進であると思います。

 「派遣契約期間切れの雇い止め」と「期間内の打ち切り」については区別が必要です。
「契約期間切れの雇い止め」のケースでは、一義的には派遣会社側に、派遣労働者の次の派遣先を探す責務があります。政府が掘り起こした求人情報との連携も強化しながらの取組みが必要だと考えています。
 「期間内打ち切り」については、派遣会社が次の派遣先を探す努力に加えて、派遣先企業が損害賠償をすることや、派遣元が加入している雇用保険によって、派遣労働者が路頭に迷う状態を阻止しなければならないと思います。

 現在は、「厚生労働省告示」で、「派遣先が講ずべき措置に関する指針」(派遣契約中途解除の場合の就業斡旋・損害賠償等)というものがありますが、強制力が無いことから、派遣労働者にしわ寄せがいっている状態だろうと思います。
 それ以前に、派遣先と派遣元が、労働契約法16条・17条(やむを得ない事由、合理的で社会通念上相当な理由のない解雇の無効)、労働者派遣法27条(正当な事由なく派遣契約を中途解除できない)を遵守して下さることが必要です。

 今後も改善が期待できないならば、「法規制」や「取り締まり」の強化が必要になってくるでしょう。
 例えば、派遣先企業に「派遣契約の中途解約にあたっては30日以前の告知」と「損害賠償」を義務付けることや、「社会保険・雇用保険への加入義務を履行していない派遣会社への取り締まり強化」などが考えられます。

 たとえセーフティーネットとしての法規制強化であっても、必ず慎重論や反対論が出てくるとは思うのですが、むしろ「優良な派遣会社が生き残れる業界」にすることが、派遣労働者の安心感につながり、派遣元と派遣先双方のメリットにもなることだと思います。

 政府は、非正規労働者保護のため、雇用保険の適用対象者の範囲を「1年以上の雇用見込み」から「6ヶ月以上」に拡大する法案を国会に提出しています。先ずは、改正雇用保険法の早期成立が必要だと思います。
 
 更に、「雇用のミスマッチ解消」と「新規雇用の創出」に、政府が全力投球する必要性については言うまでもなく、私自身も注力している最中ですが、次回に書くこととし、本日はこのあたりで失礼します。

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