コラム

  1. TOP
  2. コラム
  3. 5期目だ!野党だ!!永田町通信 平成21年10月~平成24年12月
  4. 「美しく強い日本」へ②:自立と勤勉の倫理

「美しく強い日本」へ②:自立と勤勉の倫理

更新日:

 昨日は日本人の素晴らしさについて書きましたが、多くの良き精神文化が衰退したことによって生じていると思われる事象にも目を向け、日本を立て直す為の方策を練っていかなければなりません。
 

 近年は、マスメディアの進歩に伴って、国民の知識や情報の共有化が進みました。
 それは生産性の向上や民主主義の発展に資するものではありましたが、一方で、瞬時に社会の空気が醸成されることからポピュリズム政治が常態化し、悪しき風潮が拡散するスピードも速くなりました。
 

 ここにきて、様々な問題が顕在化しています。
 

 「国民としての義務と責任」よりも「個人の権利と自由」が重んじられるようになり、その結果、昨今では「他人に過度の負担をかけても、自分だけは得をしたい」「国家や社会に迷惑をかけても、自分の権利を貫きたい」という考え方を持つ人の行動が目に余るようになってきました。
 

 最近では、生活保護の不正受給が話題になっています。
 

 例えば、東京都区部で4歳と2歳の子供が居る母子家庭でしたら、児童養育加算と母子加算を含めた生活扶助と住宅扶助で月額上限26万2700円を受給することが可能です。 
 これを悪用して偽装離婚をした場合には、密かに同居する夫の給与月額が25万円だとすると、一家で51万円を超える月収を得られることになります。
 

 政権交代直後の平成21年12月、私は、民主党が公約した子ども手当や生活保護母子加算に関して「モラル・ハザード対策の必要性」を訴える意図から、鳩山内閣への質問主意書を提出しました。
 

 歯を食い縛って働きながら納税義務を果たしてこられた母子家庭のお母さん方から、「同じ母子家庭でも、生活保護を受けながら昼間からスポーツジムに通っている母親も居ます。彼女たちの生活費を、私たちが負担していることは理不尽です。民主党のバラマキ政策は、不正受給者を更に増やすことになります」というお声を伺っていたからです。
 

 また、家庭裁判所や地方自治体の関係者からも、「母子加算や子ども手当によって、離婚に積極的な女性が増えたと感じます」「どう見ても、偽装離婚を疑わざるを得ないケースが多くなっている」という話を聞いていました。
 

 鳩山由紀夫首相(当時)から戻ってきた答弁書は、「御指摘のような可能性については想定していないため、お尋ねのような議論についても行っていない」「調査は行っていない」といったものでした。
 

 彼らは「年越し派遣村」騒動を契機に、健康な若者の生活保護申請を促進する空気を醸成していました。
 

 当時、私の故郷である奈良県では、派遣契約延長が叶わなかった労働者の為に、早々に県の臨時職員ポストや数十戸の県営住宅を用意していましたが、応募者は殆ど無かったそうです。
 

 私自身も、中小規模の事業者から「3交替制で早朝勤務があるので、日本人の若者が来てくれない」、「地場農産物を加工した特産品を作りたいが、農作業の人手が不足しているので、量産が困難だ」といった相談を受けて、失業中の若者たちに就労を勧めたのですが、「早起きは無理」「週休2日でないから嫌だ」と断られる始末でした。
 

 他県でも、各地で有効求人倍率が高い業種が存在していました。
 平成21年時点では、香川県では、金属溶接・溶断が5・7倍、金属加工が3・4倍。新潟県では、警備員・守衛等の保安職が7・4倍、千葉県では、ホーム・ヘルパー等の家庭生活支援サービスが3・8倍でした。いずれも人手不足に悩んでいたのです。
 

 ようやく今春あたりから、偽装離婚などによる生活保護不正受給の事例が多く報道されるようになり、民主党政権もモラル・ハザード対策の検討に動き始めました。
 

 我が国では、憲法第25条が規定する「生存権」を保障するべく、本当に生活に困窮している方々のためには、医療扶助、介護扶助、出産扶助、教育扶助などの制度が整えられています。
 

 それにも拘わらず、子供の給食費を払わない親、教育扶助の学用品費を使い込んでしまう親、救急車をタクシー代わりに使う人、待つのが嫌だからと軽症でも夜間救急窓口を利用する人、入院費を踏み倒して逃げる人、家賃を支払わずに居住者の権利を主張して居座り続ける人など、一部の道徳心無き人々の行為が、善意の関係者を疲弊させ、福祉・医療制度の安定性と継続性を崩壊させていっています。
 

 他方、ご高齢の方々の中には、「生活保護を受けるのは恥ずかしい」「福祉を利用しては、世間様に申し訳ない」という矜持や遠慮から、我慢をし過ぎて命を落としてしまわれるケースもあり、その報道に涙することも度々です。
 

 弱者のフリをしている人に貴重な税金を浪費されることによって真に福祉が必要な方々を支援するための財源が不足することを防ぐためにも、真面目に納税義務を果たしている個人や企業のモチベーションが下がることを避けるためにも、かつて安倍内閣が訴えていた「福祉から就労へ」という理念を再評価して、政策の軸足を移す必要があると考えます。 
 

 今こそ、日本人が「自立と勤勉の倫理」を取り戻すべき時であり、その鍵は家庭教育にあると思います。
 

 残念な現実もあるものの、生活保護不正受給問題に関する街角インタビューを受けた若い方が「人としてのプライドの問題」とコメントしておられるのを拝見して、「まだまだ日本も捨てたものではない」と感じました。

前のページへ戻る

  • 自民党
  • 自民党奈良県連
  • リンク集