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税と社会保障の「3党合意」を急いだ党執行部

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 去る6月15日(金)の18時過ぎから、自民党総務会が開催されました。総務会は、自民党の最終意思決定機関です。
 

 議題は、当日20時から予定されていた「税と社会保障の一体改革」に関する3党協議(自民党・公明党・民主党)を目前に、3党合意内容について自民党の意思決定をするということでした。
 

 3党合意内容案は、この日の総務会の席上で初めて目にするものでした。
 総務会の他のメンバーの多くも、マスコミ報道から3党協議の内容を推測していた程度で、詳細は知っておられませんでした。
 

 これまでの自民党では、個々の議員が書いた議員立法案を国会に提出する場合でさえ、政調の部会、政策会議、シャドー・キャビネット、総務会の順に審査を受け、その4回の会議の中で1人でも反対意見が出れば、国会提出は許可されませんでした。
 私自身も、苦労して書いた法案を提出するまでには、数週間から1ヶ月間をかけて多数の同僚議員を訪ね歩いては法案内容の説明を続け、4回に渡る党内審査をクリアしてきました。
 

 ところが今回は、「将来の社会保障制度の姿」や「消費税率引き上げの可否」など、実に重要な案件であるにも関わらず、3党協議の現況については、自民党所属国会議員全員への資料配布や説明は一切無いまま、いきなり総務会で意思決定をしろという執行部の方針です。
 とても驚き、強い違和感を覚えました。
 

 そもそも、「何が何でも、6月15日に3党合意、6月21日には衆議院本会議で採決」というスケジュールに拘って党内手続きを簡略化する谷垣総裁の意図が、私には理解できませんでした。
 
 今日からG20に出発する野田首相が、前回のG20で勝手に国際公約してきた事柄をオーソライズしてあげるだけ…ということになるのでしょうか。
 民主党政権になってからというもの、CO2削減目標にしても、TPPにしても、消費税にしても、国内(少なくとも民主党内)での合意の見通しも立たないままに首相が勝手に国際公約してしまい、後で大騒ぎになり放置されてしまうということが続いています。
 

 手続き論はともかく、3党合意案の具体的内容に関しては、総務会で私自身の考え方を申し上げました。
 

 第1に、消費税率を、「2014年4月に5%⇒8%、2015年10月に8%⇒10%」と、わずか1年半の間に2段階に分けて引き上げるという手法です。
 流通販売現場の混乱や対応コスト増の懸念もあり、自民党としては反対だったはずです。


 第2に、自民党は「複数税率」(例えば、食料品や医薬品や新聞等を低税率にする)を主張してきましたが、合意案では、民主党が主張する「給付付き税額控除」(低所得者対策)も検討事項として併記されることになっていました。
 
 これでは、例えば、課税所得270万円までの方は住民税も所得税も消費税も負担せずに福祉を享受することとなり、住民税も所得税も消費税も全て負担する所得層の方々がそのコストを被ることになってしまいます。
 特に給付型は、新たなバラマキ政策です。
 
 あまりにも「もらう人と稼ぐ人の2分化」を推進する政策が増えると、「弱者のフリ」をして負担を逃れる人が増える可能性もあり、勤勉に働いて真面目に税や社会保険料の負担をしている多くの方々のモチベーションを損ねることになりかねません。
 
 消費税のメリットを挙げるとすると、それは「公平性」です。
 所得に関係なく1度は消費に伴う税負担をしていただいた上で、真に福祉が必要な方々には、別途、生活扶助や住宅扶助等で手当をする方が順当なのではないでしょうか。
 自民党案では、全ての国民の生存に必要な食料品や医薬品などについては税率をアップしないのですから、是非とも「複数税率」を基本に検討していただきたいものです。


 第3に、民主党が公約した「最低保障年金制度の創設」という愚策を明確に撤回させないまま、増税を決めてしまうことへの不安です。
 
 私は、平成21年から「民主党は、給付と負担の原則を明確にするべきだ」、「国民も、『例え税負担が増えたとしても、本当に受けたい福祉サービスの質と量はどの程度なのか』を真剣に考えるべきだ」と主張してきました。
 今回の法案でも、「将来の社会保障の姿」を明示した上で、国民に負担をお願いするのが順序だと思います。


 前回衆院選の民主党マニフェストには、「国民全員が受け取れる年金制度を確立」「年金制度を一元化し、月額7万円の最低保障年金を実現します」と書かれています。
 民主党案では、政権交代後の国会審議を通じて明らかになったのは、全ての国民に毎月7万円を配るためには、高額の保険料負担と更なる増税が必要だということでした。


 民主党案では、年金保険料負担は収入の15%ということですから、国民年金に加入しておられる年収400万円の自営業の方でしたら、月額保険料は5万円になってしまいます(現在は月額1万5020円)。
 民主党の試算では、年収が420万円程度より多い方の年金は、現在より減ってしまいます。
 また、今国会で議論されている消費税率10%に加えて、更に7.1%アップしなければ財源は確保できません。


 以上、私が総務会で指摘させていただいた点です。


 明朝8時には、役員会や総務会のメンバー以外の自民党所属国会議員や支部長にも、最新の3党合意内容の説明が行われます。
 様々なご意見も出るでしょうし、党内手続きが例外的に簡略化されて3党合意が優先されたことへの不満の声も上がるかもしれません。


 最終的に3党合意の文章は、第1の指摘(2段階引き上げ)を除いては、第2の点(低所得者対策)も第3の点(社会保障制度)も、「先の検討課題」と読めるような曖昧な書きぶりになっているようですから、現段階では自民党が分裂するような大混乱には至らないのだろうと思います。


 むしろ、再来年に向けて制度の詳細が詰められていくはずですから、十分に注視しながら、自主自立と成長を重んじる自民党の理念を貫いていかなければなりません。
 
 総務会では言い過ぎたかもしれませんが、殆ど睡眠もとれずに他党との協議に臨んでこられた担当議員の方々のご苦労には、心より敬意を払っています。
 

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