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野田内閣への疑問②:TPPに関する考え方

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 外交交渉に関する権限は内閣にありますので、国会の意思を反映できるのは内閣が締結した条約の批准手続の段階になってしまいます。
 しかし、自民党では、私も含めて圧倒的多数の衆議院議員が、TPP交渉参加について慎重な対応を求める請願書の衆議院提出紹介議員になりました。


 自民党政権時代には、国際的な自由貿易体制の構築を推進する一方で、食料安全保障や治安などの観点から守り抜くべき品目等については、関税・非関税の両面から日本の立場を主張し、各国と粘り強くきめ細やかな交渉をしてきました。


 私には、民主党政権の外交交渉力についての不安から、「果たして、多国間の枠組みの中で日本の国益を守り抜けるのか」、「大統領選挙を控えたアメリカが強硬姿勢に出てくるであろう中で、普天間問題で大きな借りを作ってしまった民主党政権が十分な主張を行えるのか」という疑念があります。


 また、内閣からはTPP交渉に関する情報が殆ど提供されず、「野党側で賛否を議論しようにも、判断材料が無い」という問題が発生しています。
 「TPP参加による日本経済への影響」に関する試算についても、各省が発表した数字がバラバラで、どれが正しいのか分からない有様でした。


 更に、「野田内閣の閣僚の意思さえ統一されていないのではないか」という疑問から、仮に交渉に臨むにしても、野田内閣が一貫した姿勢を示せるのかどうか、他国に足もとを見られるのではないかという不安が募りました。



 例えば、玄葉光一郎外務大臣は、今年1月号の『Voice』に、当時の国家戦略担当大臣として、下記のような論文を発表しておられました。


「TPP参加によって、米国や豪州から安い農産物の輸入が拡大するのは必至といわれている。そのため、自由化に慣れていない日本がいきなりTPPに参加すれば、“事故”を起こす心配もある」


「私は、それがわかっていたからこそ、いきなりハードルの高いTPPの参加をめざすのではなく、まず、各国との個別のEPA/FTA交渉を高いレベルで進めるべきことを、今後の日本の方針として定めたのだ」


「今の日本の現状を踏まえれば、初めにTPP参加ありきではなく、まず2国間の経済連携を進めるという方針は、国益、または国民益からして、『ベストな結論』だと考えている」

 これは、大いに賛同できる見解でした。


 私自身も、WTOやAPECの閣僚会合に計4回参加した経験から、「多国間協議」は、最終的には「合意に向けてまとめることが基本」であり、途中での脱退については相当な国力を背景にしない限り困難だと感じています。
 そして、「多国間協議で日本の主張を反映した合意に持ち込む」ことについては、日本の主張を後押しする協力国が居ない限りは「2国間協議以上に困難」なことだと認識しています。


 玄葉外務大臣は、今や外交交渉の責任者となられました。


 数ヶ月前に月刊誌に発表されていた「初めにTPP参加ありきではなく、まず2国間の経済連携を進めるという方針は、国益、または国民益からして、『ベストな結論』だ」という考え方を変更された理由は何なのか、是非とも知りたいと思います。


 ここ数ヶ月の間に、野党では知り得ない重大な外交上の状況変化があったとすれば、それを示すことこそが、国会の理解を得る近道でもあると思うからです。



 また、山岡賢次食品安全担当大臣(兼国家公安委員長)は、今年9月9日の読売新聞朝刊に掲載された「新閣僚に聞く」で、次の様に語っておられました。


「TPPが農業にダメージを与えるにとどまらず、国のあり方を根本的に変えるものだという認識を持たないといけない。拙速に進めることは、慎重に考えなければならない」


 統一地方選を控えた今年2月5日には、栃木県医師連盟との懇親会で、明確にTPP反対を表明された旨も報道されていました(2011年2月22日/朝日新聞栃木県版)。


 食品安全や治安維持に責任を負う閣僚になられた現在、それらの観点からTPPによる影響を如何に考えておられるのかも知りたい点です。


 一川保夫防衛大臣も、今年3月7日の参議院予算委員会で、議員として質疑に立ち、TPPに関しては慎重な立場で発言をしておられました。


「我が国が木材の自由化を図ったという時期があります。昭和39年ですか」


「あのころ木材を自由化した、その結果が今日の我が国の森林の管理なり林業に皆影響してきておるわけです」


「そういうことを見たときに、こういう問題は、相当中長期的に物事を考えて対応しないと結果的には大変なことになる」

 国防上の観点から、現在のお考えを知りたいとも思います。


 そもそもTPPについては、菅内閣だった今年の1月時点でも、「1月16日夕方に、首相公邸に全閣僚を集め、TPPなど内閣の基本方針でも閣僚間の認識を刷りあわせる」と報道されていました(2011年1月15日/日経新聞)。

 野田佳彦総理大臣は、9月13日の所信表明演説で、「できるだけ早期に結論を出します」と述べられ、11月1日の衆議院本会議でも、「できるだけ早期に結論を出したい」と答弁されました。

 ところが、鹿野道彦農水大臣が、11月1日の記者会見で「10月11日以降、TPP関係閣僚会合は開いていない」と明かされ、TPPについては閣内で十分な議論がなされないまま長期間放置されてきたことが判明しました。

 とにかく現状では、あまりにも情報が不足しており、野党議員がメリットやデメリットを判断することすら困難な状況です。
 早期に閣内や与党の方針を固めるとともに、国民や国民の代表である国会に対して、正確な情報提供をしていただきたいと願います。

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