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菅総理が国会答弁で「通告がないので」と言い訳しなければならない事情

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 菅総理はじめ民主党の閣僚達が、国会答弁で行き詰った時に「質問の通告をいただいておりませんので…」といった台詞で逃げる光景が目につきます。


 去る7月12日に、私が衆議院東日本大震災復興特別委員会で菅総理に対する質疑を行った時もそうでした。


 菅総理は、「ちょっと今の私には、質問の通告もありませんでしたので、そこははっきりとは申し上げることは控えたいと思います」と答弁されました。


 私は、総理周辺が余裕をもって答弁書の準備にかかれるようにと気を遣って、前日の早い時間帯に、定められた方法と書式に従って通告を行っていました。
 それだけに、菅総理の答弁には腹が立ちました。

 私達が本会議や委員会で質疑を行う場合には、前日に、「質疑項目」と「答弁を要求したい閣僚名」を記した「通告書(書式が決まっている)」を衆議院の委員部にFAXします。
 通告書は、すぐに衆議院委員部から政府側に送られます。


 すると、間もなく質疑項目に関係する複数の役所の官僚達が議員会館の執務室に駆け付けてこられ、私から更に詳しい質疑内容を聞き出していかれるのです。

 最初に委員部にFAXする通告書の書式は、A4用紙1枚で質疑項目を数行程度で収まるように列挙する簡潔なものですが、官僚達は総理や閣僚の為に「1問1答式の答弁書」を作成しなければなりませんから、根掘り葉掘り質疑内容を聞き出そうとされます。

 優しい私は、わざわざ足を運んで下さる官僚の努力に報いる為に、大抵は全ての質疑項目をお伝えすることにしています。

 例えば、私が所属する衆議院の常任委員会は経済産業委員会ですが、特に経済産業省は完璧とも言える対応ぶりです。
 経済産業省の課長さんたちは、私が質疑内容の詳細を伝え損ねて帰宅してしまった場合には、深夜でも私の携帯電話を鳴らして、1問ずつ質疑内容を確認しておられます。


 皆が力を合わせて海江田経済産業大臣を支えようという姿勢が滲み出ています。


 ところが、東日本大震災復興特別委員会での質疑前日だった7月11日は、勝手が違いました。


 通告書に「質疑項目」とともに「答弁要求大臣=内閣総理大臣」と記して、いつも通り委員部にFAXしたものの、夜まで待っても1人の官僚も来訪せず、どの役所からも電話1本かかってきませんでした。
 政府側に詳細をお伝えしようにも、多岐に渡る質疑項目の答弁作成担当者が誰なのかも分かりませんから、どこに連絡していいのか見当もつきません。


 安倍晋三元総理に事情を話すと、「全く信じられないね」と驚いておられました。


 私自身も安倍内閣の閣僚でしたが、特に「総理大臣答弁」の内容は全府省の行政執行や政策に影響が及びますから、各府省が担当分野別に手分けして作成した総理大臣答弁書の内容については、夜を徹して府省間で綿密な調整を行っていました。


 総理や閣僚が国会で行った答弁は、しっかりと議事録に残され、以後の政府の行動を拘束することになりますし、閣僚間の答弁がバラバラになってしまっては「閣内不一致」を引き起こす恐れも生じます。
 そこで、総理や閣僚の答弁内容については、全ての関係府省と調整を行い、内閣として一致した方向性を打ち出せるようにするのです。


 当時の私は、常に「総理大臣答弁書」も委員会開会日の早朝に読み込み、自らの答弁で安倍総理と違うことを言わないように細心の注意を払っていました。


 官僚達は、関係府省間の調整作業時間を確保する為にも、通常は「答弁要求大臣=内閣総理大臣」と書いた通告書を送った国会議員には、一刻も早く接触しようとするはずです。
 ところが、7月11日には内閣総務官室からさえ1本の電話もかからず、結果的に簡易な通告しかできなかったのでした。


 官僚達が「真剣に菅総理を支えようとする気力」を失っていることの証左だと感じました。


 菅総理は、「国民にウケたことは自分の手柄、失敗したことは官僚の責任」とばかりに振舞ってこられたことを反省し、人心を掌握されるべきではないかと思います。

 また、野党議員時代の菅総理は、殆ど事前通告をせずに、自民党の閣僚達に意地の悪い質疑をしては痛めつけておられましたので、菅総理が「質問の通告もありませんでしたので」と答弁した時には怒っておられる先輩議員も居ました。


 私は、内閣も国会も「機関」であることから、「事前の通告に基づいた答弁資料作成」と「府省間の答弁内容調整」は絶対に必要だと考えています。
 
 国会は「国民の代表が集まる立法機関」ですから、総理や閣僚に個人的意見やパフォーマンスで「実行不可能な政策」を語られては困りますし、知識不足で間違った内容の答弁をされては最悪です。
 内閣が一体となって確実に実行する政策を答弁していただかないことには、質疑をする方も無駄な時間を使うことになります。


 民主党の閣僚を見ていると、「『政治主導』を勘違いして、閣内不一致の無責任な個人的答弁を繰り返す人」と「官僚が作成した答弁書を棒読みする人」の2種類です。


 「政治主導」は、国会で自由に思い付きの発言をすることではなく、長として担当する役所が「政策構築」や「内閣提出法案の起草」や「予算要求」を行う段階で的確な知恵を出し、実現に向けてリーダーシップを発揮することではないかと思います。
 

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