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尖閣ビデオ流出の原因を直視せずに「情報保全有識者会議」を設置した菅内閣の勘違い

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 去る12月16日、菅内閣が、「情報保全システムに関する有識者会議」の設置を決めたそうです。
 この有識者会議は、尖閣諸島沖で発生した中国漁船衝突のビデオ流出を受けて設置された「政府における情報保全に関する検討委員会」(委員長は仙谷由人官房長官)に対して提言を行う組織だと報道されていました。
 

 大いなる「勘違い」と言える対応です。
 

 11月8日の衆議院予算委員会で、仙谷官房長官は「国家公務員法の守秘義務規定に関する罰則の強化」を検討する可能性に言及されました。
 現行の国家公務員法 第100条1項は、「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする」「違反者は1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」と規定していますが、仮にこの罰則がもっと厳しいものだったら尖閣ビデオの流出は発生しなかったと思う人は居ないでしょう。
 

 また、仙谷官房長官は「秘密保護法」の成立も期するそうですが、この秘密保護法なるものが存在したとしても、尖閣ビデオの流出は防げなかったでしょう。
 

 政府内での「情報保全強化」については、安倍政権時代の平成18年に「情報機能強化検討会議」と「カウンターインテリジェンス推進会議」を内閣に設置し、1年間もかけて議論を続け、平成19年には基本方針を発表しています。

 「機密情報漏洩防止」「機密情報盗み出しの防止」「ハニートラップからの職員の保護」「特に秘匿すべき情報についての政府の統一基準の設定」「情報の格付けとセキュリティー態勢整備」「秘密取扱者適格性確認制度や管理責任体制の導入」「各省庁によるマニュアル・ガイドライン策定」などがその内容です。
 

 この基本方針を受けた対応が順次進められ、平成20年4月には「特別管理秘密に係る基準」以外の政府統一基準が施行され、平成21年4月には「特別管理秘密に係る基準」が施行されました。
 

 政府内での機微な情報の取り扱いルールについては、自民党政権時代に確定しているのです。
 尖閣ビデオ流出については、「運用」の誤りであり、菅内閣が新規のシステムを作る必要など無いと思います。 
 

 例えば、個人情報保護法でも、企業が「社員に個人情報の取扱方法を教育していること」や「社員の個人情報取扱方法を定期的に確認していること」を満たさなければ、企業は法律を遵守していることにはなりません。
 

 尖閣ビデオ流出事件での菅内閣の対応はどうだったでしょうか。あのビデオは、日本政府にとって秘匿すべき情報として的確に管理されていたでしょうか。
 

 そもそも事件発生後、我々野党議員も、海上保安庁からの紙資料により、「時系列的に現場で発生した事柄」は全て知っていました。
 インターネットで拝見した映像は、自民党本部で配布された紙資料の通りの内容で、何ら新たな情報ではありませんでした。
 
 また、あのビデオ映像については、多くの海上保安官が映像を閲覧・ダウンロードできる環境にあり(情報にアクセスできる者が限定されず)、機密性についての指示も海上保安庁全体に徹底されていなかったことから、流出させた公務員の倫理上の問題はあるかとは感じますが、むしろ、菅内閣が当該ビデオの機密性や情報管理についての指示を徹底しなかった罪の方が大きいと思います。
 

 菅内閣がビデオ映像公開を拒否し続けたことの公益性にも疑問が残ります。
 

 衆議院内閣委員会で中川秀直代議士が、9月21日に中国外務省の報道局長が「ビデオを最初から最後まで一部始終公開すべきだ」との公式発言を行っていたということを指摘されました。
 国益よりも中国の利益を優先しているとしか思えない菅内閣が、中国側の希望を勝手に忖度したのでしょうか。
 

 鳩山前総理は、「東シナ海を友愛の海にしたい」と言っておられましたが、尖閣諸島沖で発生した事件では中国に裏切られました。
 それでも尚、中国の顔色を伺い、日本が被った理不尽な被害を国際社会に向けてタイミング良く発信することを行わなかったのです。
 ビデオ映像を流出させた海上保安官の行為について、「公益通報だ」と擁護する声が上がったことも止むなしとさえ感じました。
 

 昨冬あたりから、各省庁の官僚による「意図的な情報提供」が多いのも事実です。
 
 自民党政権時代にも、当時の野党を応援していた国家公務員労組が自民党政権に不利な情報を民主党議員やマスコミなどに流しているとは仄聞していました。
 しかし、最近は、自民党議員に対して「国を憂う思いからです。民主党政権の暴走を止めていただきたい」といった説明付きで官僚からの情報提供が為されています。
 

 これは、民主党政権の「政治主導パフォーマンスによる弊害」だと感じます。
 表向きは政治主導ですから、国会答弁は官僚に書かせるものの、政策の意思決定過程からは官僚を排除し、「政務3役の過剰なパフォーマンスや判断ミスから生じた失敗」の後始末については官僚に押し付ける…という民主党政権への嫌気から、官僚の士気が低下してしまっているのではないでしょうか。
 

 「情報保全システムに関する有識者会議」やら「政府における情報保全に関する検討委員会」を設置する以前に、官僚とのチームワークを確立していただきたいものです。
 

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