コラム

  1. TOP
  2. コラム
  3. 5期目だ!野党だ!!永田町通信 平成21年10月~平成24年12月
  4. 「日本の水源林を守る議員勉強会」報告③:2本目の議員立法案概要

「日本の水源林を守る議員勉強会」報告③:2本目の議員立法案概要

更新日:

森林法の一部を改正する法律案 叩き台概要版


一 保安林の権利の移転・設定に係る届出

 1 保安林につき、土地に係る権利の移転・設定等により、「森林所有者」に変更があった場合について、新たに森林所有者となった者に対し、都道府県知事への届出を義務付けること。

    (「森林所有者」とは、「権原に基き森林の土地の上に木竹を所有し、及び育成することができる者」をいい(森林法2条2項)、土地の所有者のほか、土地について地上権、賃借権等の使用収益権を取得した者等を含むこととされている。)
 

 2 1の「土地に係る権利の移転・設定」は、有償(売買等)・無償(相続、贈与等)を問わないものとすること。

 3 1の届出は、森林法に定めるすべての「保安林」を対象とすること。
 これに加え、都道府県の「地域森林計画」の「保安林の整備に関する計画(森林法5条2項7号)」に記載されている、保安林として指定することを相当とする森林を対象に含めることも検討する。

 4 届出事項は、次のとおりとすること。

① 保安林に係る権利の移転・設定に係る当事者の氏名・名称等
② 権利の移転・設定の年月日
③ 森林の所在及び面積
④ 取得した権利の種別及び内容

 5 1の届出は事後届出とし、届出期間その他必要な事項を定めるものとすること。

 6 届出義務違反に対しては、罰則を科すものとすること。虚偽の届出を行った者についても、同様とすること。(法定刑について検討)
   (法人等が届出義務違反をした場合は、行為者である従業者等と法人自体について、それぞれ罰金刑を科することとする。)

 【注1:届出制を設ける趣旨】

  • 森林売買後に(負債整理目的、素材生産業者の事業利用目的等のための)皆伐がなされ、再造林作業の放棄がなされることが多いとの現状認識の下、保安林が水源の涵養等の観点から重要な意義を有していることに着目して、保安林の売買等につき届出制度を導入することとする。
  • この届出制度の目的は、行政機関が、保安林における植栽義務を負う者(保安林の管理・植栽を促す行政指導や植栽命令等の対象者)を把握するため、保安林の買い手等(森林所有者)についての必要な情報を収集するところにある。(上記の認識の裏付けとなる、造林放棄の実態や行政指導、植栽命令等の実態の把握を、より精緻に行うこととする。)

【注2:届出者が権利者であることの確認方法について】
 「森林所有者」は、土地の所有権の登記名義人と一致していることが多いため、運用上、届出に際し登記事項証明書等を添付することを想定している。これに対し、届出人が登記名義人と異なる場合や、土地の賃借権者である場合などは、契約書等を用いて自己の権利取得を疎明することとなろうか。

【注3:登記制度との関係について】
 上述のように、レアケースではあろうが、届出人と登記上の所有者が一致していない場合が起こり得る。この場合、都道府県知事としては、一応は、届出人を森林所有者として扱えば足りるが、植栽命令等の行政処分を課すような場合は、当事者間の民事上の争いの結果を待って行うということにならざるを得ないであろう。
 このように、本届出制度は、登記制度に取って代わるような役割を果たすものではないが、その意義は、都道府県知事が森林所有者を把握する上で逐一登記を確認する行政コストが省略できることや、届出人が登記名義人と異なる場合に、森林所有者を特定する重要な端緒としての役割を果たし得ることにあると考えられるのではないか。


二 植栽義務の履行確保について

 1 植栽命令(38条の監督処分)違反に対して置かれている罰金刑(50万円以下)について、森林法上の他の罰則と併せて、法定刑を引き上げることについて検討すること(法人等が命令違反をした場合は、行為者である従業者等と法人自体について、それぞれ罰金刑を科することとなる。)。

 2 植栽義務の代執行等について、要件を緩和した規定を設けるものとすること。

【注:植栽義務の代執行について】
 ここでは、植栽命令に違反した場合に、不在森林所有者等を念頭に、行政代執行法の代執行の要件を緩和した制度を設けることを想定している。ただ、林野庁によると、現状では、植栽命令が出されたケース自体が全くないということなので、このような制度を設ける必要性について更に検討する必要があろうか。


[以下(三・四)については、保安林に限定せず、すべての民有林を対象とすることとする。]


三 山林に係る地籍確定等の促進

 1 時期を区切った山林地籍確定作業

 国は、時期を区切って、全国的な山林地籍確定作業を行い、早期に全森林の境界域について確定するものとする。


 2 森林区画整理事業の実施

 国及び地方公共団体は、1に規定するもののほか、すぐには地籍調査を実施する状況にない山林の境界の明確化を図るため、将来の地籍調査に向けてのおおむねの境界を調査・記録する事業(現在の山村境界保全事業)及び森林施業の実施に必要不可欠な施業区域面積等の把握のための簡易な測量等の作業を支援する事業(現在の森林整備地域活動支援交付金制度)の実施に関し必要な措置を講ずるものとする。(これらの事業を「森林区画整理事業」と称することとする。)

 3 森林(林地)情報のデータベース化の推進

 国は、地籍簿の正確性の確保、森林の売買の円滑化を図るため、森林(林地)情報に係るデータベース化を含む、林地に関する基本的な資料の整備について必要な措置を講ずるものとする。


四 森林の管理についての国等の責務

 1 新たな森林管理主体及び森林・林業に携わる人材の育成

(1) 国は、森林所有者による森林の整備及び保全が困難となっている現状にかんがみ、森林組合等の提案による施業の集約化及び信託方式による森林経営の普及を促進するため、これらの事業を担うことのできる主体の育成、当該主体への財政的支援その他の必要な措置を講ずるものとする。

(2) 国は、教育研究機関と連携し、森林・林業の専門家の養成及び地域一体となって行う森林管理や森林資源の活用のためのリーダーを養成するために必要な措置を講ずるものとする。

 2 公有林化を行った都道府県への財政支援

 国は、地方公共団体が水源の涵養その他の観点から保安林に指定されている森林その他の国土保全上必要な森林について買入れを行うための費用について、必要な財政上の措置を講ずるものとする。

 3 保安林の指定の促進

 国は、水源の涵養その他の観点から重要な民有林で保安林の指定がなされていないものについて、保安林の指定の促進を図るため必要な措置を講ずるものとする。


五 施行期日及び経過措置

 1 この法律は、公布の日から1年を経過した日から施行する。

 2 所要の経過措置を設けるものとする。


【注:施行の際現に森林所有者である者の取扱い】
 上記一の届出義務を、施行後に権利取得があった場合のみならず、施行の際現に森林所有者である者にも課することとするか、検討することとする。届出義務を課する場合、実効性確保の方法についても、検討することとする。
 

前のページへ戻る

  • 自民党
  • 自民党奈良県連
  • リンク集