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君子は豹変す

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 昭和50年代から始まった「ゆとり教育」の進行は、近年では日本の国際競争力低下要因として問題視されるようになりました。
 過日、中山成彬文部科学大臣が「ゆとり教育」を見直す方針を示されましたが、「コロコロ方針を転換されては、現場が混乱する」との批判的報道が多く見受けられました。

 政治家が一旦決まった方針を変更する場合は、大抵大きな批判を受けることになります。例えば、衆議院に小選挙区比例代表並立制を導入した改正公職選挙法は、内閣が退陣に追い込まれる程の混乱の末に成立した法律ですが、平成8年総選挙で初めて実施してみると、数々の問題が出てきました。完璧な選挙制度など無いと言われるものの、民主主義の拠り所である選挙制度をより優れたものにする努力を怠るべきではないと思うのですが、あの時も、「たった一度しか実施していないのに、選挙制度を再変更するのはおかしい」というマスコミの指摘を世論が支持し、改善の必要性を訴える国会議員の声は抹殺されてしまいました。

 松下正治氏のご著書『経営の心』に、松下幸之助氏の面白いエピソードが紹介されていました。
 社内で色々検討を重ねて、幸之助氏も「これでいこう」と納得された方針なのに、翌朝になって、「昨日あのように決めたけどなあ・・」と言い出されることが度々有ったというのです。
 文句を言った正治氏に対して幸之助氏が返した言葉は、「『君子は豹変す』や」だったそうです。
 幸之助氏は、考え抜いて結論を出した後も、実行に移す直前まで「本当にこれで良いのか。もっと良い結論はないのか」と考え続けていたというのです。「これは『優柔不断』ではなく『熟慮』だ」と、正治氏は評価しておられました。

 ピザーラでお馴染みのフォーシーズの浅野秀則社長も、「朝礼暮改」を恐れないと聞きます。「むしろ、誤りであると解った方針を翌日まで続ける事の方が、私は怖い」との浅野氏の言葉に、ビジネス界の厳しさを痛感するわけですが、実は国家国民の運命を左右する政治リーダーにこそ、時には「君子は豹変す」と言い放てる勇気が求められるのではないかと思います。

 国政の場では、激論の末の法改正で改善されたはずの制度であっても、実際に法を施行してみると多くの問題点が見えてくるといったことが度々有ります。
 政治家も、最初の判断において間違いを犯すことは有るでしょうし、日本を取り巻く環境が急変して政策を変更せざるを得ない場合も有るでしょう。政治リーダーには、熟慮熟考の上で政策変更の必要を感じた場合には、一時的な批判を恐れず堂々と豹変し、その必然性を率直に国民に説明できる君子であっていただきたいと願います。

 特に、子どもたちは日々成長し、たった一度の義務教育の真只中に居るのですから、中山大臣には、ベストな教育施策を探求し続けていただきたいと願います。

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