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サラリーマンの重税感

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 サラリーマンの皆様は、年末調整の書類を記入されている頃かと存じます。  
 所得税制は、少しずつ改正されてきたものの、まだまだ「重税感」「不公平感」が払拭できない現状ですね。

 数年前にサッチャー元英国首相が来日された折、彼女と討論会を致しました。 
 サッチャーさんは、所得税率の上限を83%から40%に引き下げた首相でした。高所得者に過重な負担をさせて低所得者は福祉に依存するという「行き過ぎた結果平等」を廃し、努力に応じて結果が出せる「機会平等」へと、英国の諸制度を変革したのです。
 高所得者の可処分所得を増やすことで消費を生み出し、低所得者には、福祉に頼るよりも働いて納税者となることを勧めました。当時は「金持ち優遇」「弱者切り捨て」との批判にさらされました。
 しかし、サッチャー首相は、「金持ちを貧乏にしても、貧乏人は金持ちにならない」「社会主義は、優れた人、自分で仕事を始めて儲けようとする人の足をみんなで引っ張る。要するに嫉妬から出ているのだ。こんなのが昔からあったら、我々はまだ石器時代だ」と、過激な言葉で自説の正当性を主張しました。
 日本で首相が同じ発言をしたならば、「舌禍事件」としてマスコミの集中砲火を浴び、瞬時に退陣に追い込まれるでしょう。サッチャー首相は、「世論の良質な部分」に向けて粘り強く説得を続けたといいます。

 私は、日本のサラリーマンの「頑張って働いて基本給が増えたはずなのに、殆ど手取りが増えない(減ることもある)」という重税感・無力感の原因は、急な累進構造税率にあると思っています。
 複雑な控除制度や選挙対策の課税最低限引き上げのせいで、所得が有るのに税負担をしない人を増やし過ぎ、全般的にサラリーマンの負担税率が高くなっているのです。もちろん自営業者でも、多くの方が高過ぎる税負担に頭を抱えながら確定申告時に税務署とやりあっておられます。

 仮に、「1000円所得が有れば70円税金を払ってもいいよ」と全ての所得者が言って下されば、一律7%の所得税率でも、現在と同額の所得税収が国庫に入る計算になります。つまり、課税ベースを全所得者に広げることによって、全体の税率を低く抑える方法です。  
 どんなに所得が増えても税率は7%のままですから、頑張れば頑張っただけ手元に残るお金は増えていきます。仕事に張り合いも出てくるでしょうし、可処分所得の増加によって、消費や投資は増えていくでしょう。
 ただ、0%から7%へと引き上げの対象になってしまう方々の反発を恐れて、政治的には実現不可能なアイデアでもあったのです。
 そこで、一律10%税率として、余分に国庫に入ったお金を低所得者向けの激変緩和措置や福祉に使う方法を提案したいと思います。これでも、中期的に見ると、殆どのご家庭の可処分所得は増えていくはずです。

 実は、この「一律税率制」を過去の選挙で訴えたのですが、選挙区では総スカンでした。サッチャー税制以上に徹底した機会平等主義ですので、「金持ち優遇」「弱者切り捨て」との誤解を与えてしまったのです。
 しかし、所得税率の一律税率化は、所得の無い方には関係の無い話です。むしろ、所得の無い方にもかかってくる消費税率を安易に上げることの方が、弱者切捨てになると思います。複雑な控除制度を整理してシンプルで広く薄い負担の所得税制へと変えていくことによって、少しでも需要を創出し、企業の直接金融の可能性を広げ、経済のパイを大きくして税収増を図るべきだと考えています。
 私が関西で意見交換をしている中小製造事業者たちの悩みは、パート労働者の就労調整です。年末になると、配偶者控除等の関係でパート労働者が連続休暇を取る為、納期遅れや不良品率上昇が続き、とうとう外国の業者に仕事をとられてしまったとの話も聞きました。本来は、働く女性にとっても、複雑な控除制度による「働き損」を避けて就労を抑えるよりも、「5時間余計に働いたら、手取りも5時間分増える」といったシンプルな税制が好ましいのだと思います。社会保険制度も個人単位への移行が予想される昨今、しっかりと責任を持って仕事をこなし、職場での地位を確立しておく方が得策かもしれません。

 12月は永田町でも、税の季節です。ベストな税制構築に向けて、少々過激でもいいですから、本音の議論が行われることを期待しています。

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