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世論と政治

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 5月の中旬頃だったと記憶していますが、イラク戦争期間中には「米国の軍事行動を支持する」という小泉発言に反対した人が過半数だったが、戦争が終わった現在では「小泉首相の決断が正しかった」と思う人が過半数になっているとの世論調査結果がテレビで報道されていました。
 まさに「政治は結果である」ということの現われでしょう。


 開戦前の3月5日、参議院予算委員会で、小泉総理が「世論に従って政治をすると間違う場合もある。それは歴史が証明している」と発言したと報道され、野党が反発して問題になりました。
 委員会の議事録を読みますと、総理のご発言は「世論は世論であります。尊重しなけりゃならないと思いますけれども、世論の動向と日本全体の利益を考えてどう判断すべきかというのは、政治の責任に当たる者として十分配慮しなきゃいけないと思っています。世論の動向に左右されて正しいかというのは、歴史の事実を見れば、そうでない場合も多々あるわけであります」というものです。
 私は、これは正論だと思っています。


 私たち国会議員は、選挙によって国民の付託を受けています。次の選挙までの間に選挙公約以外の政治課題に直面した時には、付託を受けた者として、日本の将来への責任を噛み締めつつ、自ら判断をしなければなりません。
 国政の場で得られる情報は、莫大な量に上ります。1つの法案への賛否の判断をするにも、個々の議員が多くの資料を読みこなした上で、自民党の場合ですと、毎朝8時からの政調会の各部会で激しい議論を続け、全員一致で賛成できる内容になるまで修正が検討されます。その上で、更に総務会等の党内組織で論議されてから賛否が決まります。

 国民の代わりに莫大な時間を割いて精査しながら、長期的なビジョンをもって判断を下す営みが「職業としての政治」の本質だと思いますし、代議制民主主義の意義でしょう。総理だって、国民の代わりに国会議員が投票して選出しているのですから、間接的に国民の付託を受けているわけです。


 全て「世論」に従うのであれば、全ての外交戦略や法案を国民投票で採決すればいいわけです。しかし、それでは国民の時間やコストの負担は莫大になりますし、判断に必要な情報を全国民が共有する事も物理的に無理です。
 そんなわけで、総理の発言は物議を醸しましたが、代議制民主主義の本質に触れたものであったと感じています。

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