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貯蓄率低下とシニア対応ビジネス

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 平成3年の日本の家計貯蓄率は15・1%で、世界のトップ水準にありました。景気の浮き沈みはあっても、コツコツと蓄える堅実な国民性が日本経済の安定感を支えていたわけです。
 この10年間で日本の貯蓄率は約半分の水準に低下し、現在は6・4%。フランスが12・2%、ドイツが10・4%ですから、他国と比較しても、低くなりました。

 金融機関の金利低下や不況下での所得低下(可処分所得低下にも関わらず消費が横ばいであることによる『消費の慣性効果』)など、貯蓄率低下の要因は色々あるのでしょうが、特に目立っている要因は「高齢者の貯蓄取り崩し」なのです。
 貯蓄を取り崩した分、60歳以上の方の消費性向は大きく伸びています。
 現在、国民全体では「消費は横ばい」とされていますが、住宅ローンや教育費負担の大きい30歳代や40歳代の消費は低水準で、これを補っているのが60歳以上の消費です。なんと、前年比6%を超える伸び率なのです。
 
 昔の「お年寄り」とは違った新しい考え方を持つ層が、高齢者と呼ばれる年齢に達したせいかしら・・と思ったりもしています。2年程前に目にした高齢者対象の世論調査結果では、「自分の子供にお金を残してやろうとは思わない」と答えた方が過半数に達しており、ニュー・シニア世代の考え方や親子関係の変化に驚きを感じたものでした。

 それでも、現在の70歳代半ばの方達は、比較的堅実で、私の両親なども何かにつけ「もったいない」と節約しています。ただ、たまに買い物をする時には、私と違って「高価でも上質な品物」を買いますので、この年齢層が活発に消費を始めると、景気は好転するんだろうな、と感じていました。

 シニア世代に流行りのパソコン教室やダンス教室、生涯スポーツ・サークル。それに伴うパソコン関連商品やダンス・ウェアやスポーツ・ウェアの購入。海外旅行パック、健康食品や情報化対応型ケア付きマンション、火災や窃盗の不安を取り除く自宅警備サービス、高級衣料品等々、企業側でもシニア世代をターゲットとしたマーケティング戦略に転換する例が見られ始めています。
 日本の金融資産の半分を保持していると言われる高齢者層。余りにも急激な貯蓄率低下は日本の不安定要因になる可能性がありますが、この層の消費性向の伸びは、日本経済活性化の鍵にもなるのでしょう。
 
 この度経済産業省が発表した「新産業創造戦略」にも、深刻な高齢化問題を反対にチャンスと捉える視点が記されていて、政府の産業施策にもシニア世代の動向が反映されつつある流れを感じました。

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