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敗者の痛み

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 声楽家の米良美一さんが、「波乱万丈」というテレビ番組でご自分の体験を話しておられました。  
 米良さんは、若くして海外の桧舞台で活躍され、日本のマスコミでも華々しく取り上げられ、脚光を浴びておられました。ところが、余りの忙しさとストレスから、声楽家の命である声が出なくなってしまったというのです。その状態が何年も続き、地獄の苦しみを味わった後に、やっと声を取り戻し、地道に活動を再開されたという話でした。
 米良さんは、自らの声を失うまでは、声が出なくなった同業者の話を耳にしても「どうして?」としか思えなかったそうです。長い苦悩を経てからは「他人の痛みが解るようになった」事を喜んでおられました。
 
 先月、ウシオ電機の牛尾治朗会長にお会いした時、同じ様な話を伺った事を思い出しました。
 牛尾会長は、選挙に落選した私を力づけようとして下さったのでしょう。「良い政治家になろうと思ったら、落選の経験も必要さ。安倍晋太郎さんや麻生太郎さんも、3期目、4期目という中堅議員になってから落選を経験している。落選した人の気持ちが解る、他人の痛みが解る事は大事だよ」と言って下さいました。

 確かに、落選してみて初めて解った事って有ります。
8年前に、お世話になった先輩議員が落選されました。
選挙直後に出会いましたら、「もう政治は引退しようと思っている。自分は体力の限界まで地元活動をしたが落選した。あれ以上の努力は今後も不可能だから、悔いは無い」と言われたのです。私は、「まだお若いのに、何をおっしゃるんですか。再挑戦して下さいよ」なんて事を言ってしまったのです。
 ところが、昨秋の選挙で落選した直後の私は、先輩と同じ様な気持ちだったのです。「毎朝7時には役所に登庁して、副大臣として精一杯働いた。役所の出張も多く、選挙区活動に割ける時間は限られていたが、全力投球した。あれ以上の努力は不可能だったのだから、再挑戦の余力など無い」と思ったのです。
時間が経つと闘争心は湧いてきたのですが、8年前の無責任なコメントを後悔した次第です。
 4年前の選挙で親しかった代議士が落選した時には、励ましの電話をかけたかったのですが、悩んだ挙句に止めてしまいました。自分が当選している以上、どんな励ましの言葉も却って相手の傷を深くする様に思えたのです。
 でも、自分が落選してみると、元同僚議員からの電話は嬉しいものです。「今度こそ頑張れよ。高市と一緒にやりたい政策、一杯残ってるんだから」などと言ってくれると、単純に元気が出ます。反対に、とても親しかった議員から音沙汰が無いと、忘れられている様で淋しかったりします(きっと気を遣ってくれているのでしょうが・・)。
 世の中、何でも経験してみるもんですネ。

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