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日本的経営の良さ再考

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 年金受給開始年齢に合わせて、将来は企業の定年を65歳に引き上げるべきとの声が政界から聞こえてきます。
 景況に応じて定年が60歳であっても40代でリストラされてしまう場合も多々ある昨今、企業側からは「定年を引き上げると人件費に耐えられない」「若い人を雇う余裕が無くなる」と不満の声が上がっています。

 そもそも「定年制度」というのは「終身雇用」「年功序列人事」といった旧来の「日本的経営」が前提のシステムです。
 企業側も、社員が定年まで自社で働く事を想定していたからこそ、高額の社員研修費を使い、家族も含めた福利厚生を用意し、定期昇給を考えながら社員の定年までの人件費を計算していました。
 一方で、転職率が高く能力主義の米国では、就職時の履歴書に年齢を書く必要も無ければ、定年も自らが「リタイアの時」を決めるのが定番でした。
 90年代から、日本でも「キャリアアップの転職」がブームとなり、人材の流動化が起こり、能力主義の人事・給与システムを取り入れる企業も増え、定年制度は徐々に形骸化してきたのです。

 しかし最近は、米国企業が、かつての「日本的雇用戦略」を重視し始めた様に見えます。終身雇用制やチームワーク制などです。
 シスコシステムズという米国企業では、離職率は僅か8%、社員間のチームワークを重視し、経営陣の報酬も低額に抑えています。入社時にはオリエンテーションも行い、社員への企業文化浸透に取り組んでいます。
 日本では、社員研修など人材育成投資を縮小し続けていますが、米国やEUでは社員研修費用が大幅に伸びており、社員1人当たりにかける金額では日本企業の2倍から3倍となっています。1992年に製造業労働生産性で米国が日本を抜き、その差は拡大し続けています。長期雇用を前提とした人材育成投資の拡充が、未来の競争力の鍵となる予感がします。

 キャノンの御手洗社長は、月刊誌のインタビューで「終身雇用は守る、と社員に向けて何度も繰り返してきた。社員は自分の仕事内容が大きく変わろうと、安心して将来を見据え、地道な努力を続ける事が出来た」と発言されており、シャープの町田社長も「技術の融合を生む為にも、社内にノウハウ、人材のストックをいかに積み重ねるかが重要。頑張って終身雇用を維持していきたい」とおっしゃています。
 業種によっては人材流動化が活力となる場合もあるのでしょうが、今一度、本来の日本的経営の良さも見直す時期かと思いました。

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