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小泉政権の足跡と次期政権への期待

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 本日、安倍晋三代議士が第21代自由民主党新総裁に就任、26日には内閣総理大臣に就任される予定となりました。
 約5年半の間、政権を担当された小泉総理は退任されることになりますので、今回は、小泉内閣の軌跡を振り返ってみることにします。


【2001年】

 2001年4月26日に小泉内閣は発足し、同年5月7日の所信表明演説で、小泉総理は「聖域なき構造改革」を表明されました。
 内容は、特殊法人改革、医療改革、総合規制改革、改革断行予算の編成などでした。
 この年の9月11日、米国で同時多発テロが発生。10月7日には、米軍がアフガン攻撃を開始し、小泉首相が「強い支持」を表明。
小泉総理就任前にはえひめ丸事件、就任後には池田小児童殺傷事件という悲しい出来事のあった年でもありました。

~2001年の主な立法~

①テロ対策特別措置法;米軍後方支援活動のための自衛隊海外派兵が可能に。
②自衛隊法改正;自衛隊による基地警備の為、「警護出動」新設。防衛秘密を漏洩した出入り業者を処罰可能に。
③海上保安庁法改正;停船命令に応じない不審船へ船体射撃を可能に。
④PKO協力法改正;PKF本体業務への参加凍結を解除。武器使用基準も緩和。
⑤特殊法人等改革基本法;特殊法人と認可法人の改革のため、総理大臣を本部長とする改革推進本部を設置。「民営化」「独立行政法人化」「組織形態を見直して存続」のうちのいずれかの整理合理化計画を1年以内に定め、2005度末までの集中改革期間内に改革を実現。


【2002年】

 2002年4月15日に「有事法制関連3法案」が国会に提出されました。継続審議の後、成立は翌2003年となりました。
 9月17日には、北朝鮮の金正日総書記と初の首脳会談が行なわれ、日朝平壌宣言に調印。10月15日には、北朝鮮の日本人拉致被害者5人が帰国。歴史に残る年となりました。
 この年には、ソルトレークシティで冬季オリンピックが開催され、アジア初のサッカーワールドカップを日韓が共催しました。EU圏内では、新通貨ユーロに完全統合が実現しました。

~2002年の主な立法~

①郵政関連法;日本郵政公社発足。信書送達事業への民間事業者参入可能に。
②健康保険法等改正;サラリーマンの医療保険の自己負担分を3割に引き上げ。
 自己負担限度額も引き上げ。保険料算定に総報酬制を導入。老人医療対象者を段階的に75歳に引き上げ。公費負担割合を段階的に5割に引き上げ。
③特殊法人改革関連法;49の特殊法人・認可法人のうち42法人を、民間の経営手法を取り入れた38の独立行政法人に改め、7法人を民営化。      
④道路関係四公団民営化推進委員会設置法
⑤構造改革特別区域法


【2003年】

 3月20日には、米英軍がイラク戦争を開始。当時の私は、経済産業省の副大臣でした。原油供給ルートの確保や価格注視、原発やガスタンクを狙ったテロへの備えなど、経産省職員ともども緊張の日々でした。
 4月21日に「構造改革特区」が誕生。ユニークな規制緩和等のアイデアを打ち出された57の地域が、第1次分の特区として歩みを始めました。
 玄界灘海難事故が発生した年でもありました。

~2003年の主な立法~

①武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律;武力攻撃事態など、いわゆる有事となる事態を定義。  有事において国や地方公共団体が必要な措置を取ることを明記。また、国(内閣総理大臣)が地方公共団体(の長)に対して、必要な措置を取らせることができることも明記。国や地方公共団体が取る措置に対し、国民は協力をするよう「努める」として、憲法で保障される国民の自由と人権は尊重されるべきとする一方で、制限が加えられうることも示される。武力攻撃を排除するために必要限度の武力を行使することが示される。
②イラク人道復興支援特別措置法;イラク戦争後のイラク国民の自主的な再建努力を支援する国際社会の取組みに我が国が主体的に寄与するため、医療・被災民の帰還・復旧などの人道復興支援活動と、国連加盟国による安全安定回復活動を支援する医療・輸送・建設などの安全確保支援活動を行う。
③テロ特措法改正;時限立法の同法の効力を2年間延長し、インド洋への海上自衛隊派遣期限が2005年11月まで延長される。
④個人情報保護法;高度情報通信社会における個人情報に関する個人の権利保護のために、国及び地方公共団体の責務を定め、関係施策、個人情報取扱事業者の義務、主務大臣の認定を受けた民間団体による個人情報保護の推進などについて規定。
⑤少子化社会対策基本法;少子化に対処する施策の基本理念、国や地方公共団体や国民などの責務、基本的施策と内閣に設置する少子化社会対策会議について規定。

 
【2004年】
 
 2004年2月8日に、陸上自衛隊本隊がイラクのサマワに到着しました。
 4月には、イラク日本人人質事件が発生。武装集団が「イラクからの自衛隊の撤退」を要求するも、小泉総理は「テロには屈しない」として断固拒否。その後、人質3人は無事に解放されました。さらに2人が拉致される事件が発生しましたが、同様に解放されました。
 5月22日に小泉総理は再訪朝し、平壌で金正日総書記と会談。北朝鮮に対す
る25万トンの食糧及び1000万ドル相当の医療品の支援を表明し、日朝国交正
常化を前進させると発表。5人の拉致被害者のご家族の帰国を実現しました。
 10月、イラクで再び日本人人質事件が発生。アルカーイダが「イラクからの自衛隊撤退」を要求するも、小泉総理は「テロには屈しない」として断固拒否。
その後、人質は殺害されるという残念な結果となりました。
 11月17日、自民党憲法調査会が憲法改正大綱素案を発表。
 この年には、「地方に出来る事は地方に、民間に出来る事は民間に」という小泉総理の政府論を具現化するものとして、「骨太の方針」が発表されました。
2004年度はこの改革によって、国庫支出金が1兆300億円、地方交付税が2兆
9000億円、それぞれ削減され、6600億円の税源移譲が行われました。税源移譲額よりも補助金削減額のほうが大きいため、地方自治体からは税源移譲が不十分だとの声も上りました。
 また、政治家の年金未納問題や新潟県中越地震の発生、アテネで夏季オリンピックが開催されたのも、2004年でした。
 
~2004年の主な立法~

①年金改革関連法案;国民年金法等改正
②道路関係四公団民営化関連法;道路関係4公団を、2002年の民営化推進委員
会の意見書に基づき民営化。
③武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律;国民保護法
④武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律;米軍行動円滑化法
⑤武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律;特定公共施設利用法
⑥国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律;国際人道法違反処罰法
⑦武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律;外国軍用品海上輸送規制法
⑧武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律;捕虜取扱法
⑨自衛隊法の一部を改正する法律;改正自衛隊法
⑩特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法;主として北朝鮮船舶を想定
⑪裁判員制度法;司法制度改革の一環として、国民の中から選任された裁判員が、裁判官とともに刑事訴訟手続きに関与する制度を創設。
⑫市町村合併特例法;1965年制定の市町村合併特例法は、2005年3月31日までに行われる市町村合併に適用されるものとし、2005年4月1日以降に行われる合併に適用される新法を整備。


【2005年】

 2005年7月7日に、自民党改憲要綱案が発表されました。
 8月8日には、 郵政民営化関連法案が参議院本会議で否決されます。小泉総理は、衆議院解散を閣議決定し、署名を拒否した島村宣伸農林水産大臣を罷免、自ら兼務しました。同日夜、憲法7条に基づき衆議院を解散。この解散は「郵政解散」と呼ばれ、9月11日投票の総選挙が施行されました。
 総選挙後、10月20日に郵政民営化法案が成立しました。
 この年は、清子内親王殿下のご成婚が明るいニュースでした。

~2005年の主な立法~

①郵政民営化法
②介護保険法改正;2000年にスタートした介護保険制度の初の大幅手直し。利用者急増による財政悪化への対応がテーマ。6段階だった要介護度のうち「要支援」を「要支援1」と「要支援2」に分けて7段階に。要支援1と2の方を対象に筋力トレーニングなどの介護予防サービスのための給付を創設。保険負担だった介護施設の食費や居住費を自己負担化。各区市町村による地域密着型サービスの創設、ケアマネージャー資格の5年ごとの更新制の導入も。
③障害者自立支援法;身体・知的・精神の障害ごとに異なる福祉サービスを1本化し、利用者に原則1割の定率負担を求める。
④改正銀行法;スーパー・コンビニ・自動車ディーラーなど一般企業の出先も銀行代理店となり、預金口座の開設や個人向け融資の取り扱いを可能にする。

 
【2006年】

 構造計算書偽造問題(耐震強度偽装問題)、ライブドア事件、北朝鮮によるミサイル発射など、多くの課題に直面しました。
 厳しい気候条件の中でご苦労された陸上自衛隊の方々がイラクから撤収。しかし、クウェートに展開中の航空自衛隊の皆様は、イラクへの空輸業務に従事中です。
 小泉総理は、9月の自民党総裁任期切れに伴い退陣を表明され、安倍官房長官が次の政権を担われることになったところです。
 アメリカでワールドベースボールクラシックが開催され、日本が初代優勝国となったこと、ドイツで開催されたサッカーワールドカップをテレビで観戦したこと、秋篠宮殿下・妃殿下に親王様が誕生されたことなどが、今年の嬉しい思い出となりそうですね。

~2006年の主な立法~

①行政改革推進法;国家公務委員の5%以上純減、政府系金融機関改革、特別会計の見直しなどを「重点5項目」として、改革肯定や数値目標を盛り込む。
②医療制度改革関連法;高齢患者の負担増や入院日数の短縮、生活習慣病予防の徹底などで医療給付費の抑制を図る内容。


【小泉政権が成し遂げたこと】

 何と言っても、「構造改革の断行」だと思います。

 何十年も前から、「規制緩和」「地方分権」「財政再建」「省庁縦割りの弊害除去」などを訴えていた政治家や評論家は多く居られましたが、実際に批判を恐れず構造改革を断行されたのは、小泉総理でした。

 特に、「構造改革特区」「市場化テスト」などの規制緩和は、「既得権益を持つ人だけが得をしない。多くの人にチャンスを与え、フェアな競争をしてもらう改革」、「知恵を出し、汗を流して頑張った人がチャンスを掴める改革」でした。
 規制緩和や地方分権を進めるほど、当然のことながら一定の格差は出ますが、安倍政権が「格差を固定化しない社会」「全ての人がチャレンジの機会を得られる社会」を目指していかれることに期待を寄せています。

 90年代のバブル崩壊、資産デフレ・・と、日本経済は厳しい状況にありましたが、小泉政権は「負の遺産整理→成長へ」という目標を立て、我慢強い取り組みをしました。
 2001年から2004年を「集中調整期間」とし、①不良債権処理加速化による「負の遺産清算」、②2004年度末に、不良債権正常化、③企業部門の3つの過剰(雇用・設備・債務)解消・・と歩みを進めました。
 その後、2005年から2006年は「重点強化期間」とされ、①「新たな成長基盤」の重点的強化、②2005年度後半に、経済全体の需給をほぼ均衡、③基礎的財政収支赤字を2006年度で3%以下に・・という取り組みが続行中です。

 「基礎的財政収支」は、相当改善しました。
 小泉政権発足後、17年度までに10兆円余りの歳出削減が実現し、例えば、過去5年で公共事業費は4割減っています。
 また、小泉総理は平成17年1月までに、163の特殊法人等のうち136法人の組織形態について、法制上の措置その他必要な措置を講じました。個別の事業についても、「特殊法人等整理合理化計画」に基づく徹底した見直しを行い、特殊法人等向け財政支出について改革開始後4年間で実質的に約1兆5000億円を削減する等の成果が出ています。
 
 景気も回復し、2005年度の税収見込みは5兆円も上方修正されるという嬉しい結果が出てきています。
 今後、安倍政権には、2007年から2010年で国と地方の基礎的財政収支を確実に黒字化し、2011年から2015年で債務残高GDP比の発散を止め、安定的に引き下げるという大仕事が残っています。

 長期債務残高が増えたことをもって「小泉改革は失敗だった」とおっしゃる方も居られますが、私はそうは思いません。
 2000年度末に491兆円だった長期債務残高が2005年度末に590兆円と約1.2倍になっているのは事実ですが、ここには、財投債や政府短期証券(利払い・償還を税財源で賄うものではないもの)が含まれており、これらは毎年度の財政赤字をそのまま反映するものではありません。
 国の長期債務残高」が累増してきた主たる要因は、高齢化の本格的な進展による社会保障関係費の増加、景気の低迷による税収の減少、「定率減税」など減税の影響によって30兆円を上回る国債発行を余儀なくされたことなどにあります。
 今後、「経済成長と歳出削減を両立させながら、財政を健全化し、就業支援や職業教育などで納税者を増やすことで持続可能な福祉社会を築こう」という安倍新総裁の方向性は間違っていないと思います。

 小泉政権が実現を期したものの、積み残しとなっている課題も幾つか有ります。
 「教育基本法改正」「憲法改正のための国民投票法案」「組織犯罪処罰法改正」「防衛庁の省昇格」「社会保険庁改革」「道州制特区推進法」など。
 安倍政権が、まずこれらの課題をクリアし、北朝鮮による拉致事件解決に向けた取り組みも強化して下さることを期待しています。

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