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竹島海域調査を巡る日韓摩擦に思うこと

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 竹島周辺海域の海洋調査を巡って、日韓間の緊張が高まっています。今日、外務省事務次官が「円満な解決の為に」韓国に向かい、外交交渉が終わるまで海上保安庁の測量船は調査を行わないことになりました。

 昨夜の報道番組では、韓国の小学校で竹島問題の特別授業を行い、子供達が日本を批判する様子や、街頭インタビューで韓国の若者が「日本による主権侵害」に反発する模様が放映されていました。
 一昨夜から今朝まで複数の報道番組を観ましたが、ゲストの評論家が「竹島周辺海域については、日韓両方が納得できる名前をつけるしかないですね」と発言したり、キャスターが「小泉さんの靖国参拝が原因」と発言したりという有様です。
 韓国人に較べて日本人の領土に対するこだわりは希薄だと感じているのは私だけでしょうか。長年、韓国による竹島の不法占拠状態を許し、教育現場でも日本固有の領土についてしっかりと教えてこなかったツケが廻ってきた感があります。
 
 領土保全を侵されているのは日本であるはずなのに、日本政府に断固たる対応を迫る国民世論の後押しはなく、政府の選択肢は限られてきます。
 そして、安倍官房長官がおっしゃるとおり、「円満な解決が両国の国益に資する」のは間違いないでしょう。

 しかし、不幸にして話し合いによる円満な解決がなされなかった場合の短期的シナリオも必要です。
 仮に韓国側が「断固たる対応」として公海上で日本の測量船を拿捕するとしたら、これは明らかに国連海洋法条約違反行為です。
 しかし、既に韓国側は国連事務総長宛に強制的紛争解決手続きを拒否する宣言書を送付し、日本が国際司法裁判所に提訴しても応じない意思を示していると言われます。「紛争」覚悟の先手を打たれているわけです。
 例えば自衛隊の船舶に護衛してもらいながらでも海洋調査を断行するといった選択肢があるのでしょうか。韓国に出遅れたものの、国際司法裁判所および国連本部に対してアクションを起こす用意はあるのでしょうか。

 また、中期的なシナリオも必要です。
 今回、円満な解決がなされて緊張状態を脱したとしても、今後、竹島や尖閣や北方領土の帰属についての明確な戦略はあるのでしょうか。
 私自身が領土問題等について質疑に立てる委員会に所属していないのが残念ですが、中長期的な戦略も含めて早急に議論を開始しなければ、次々に他国による「実効支配」を許す結果になるという危機感を強めています。

 北方領土など日本固有の領土が他国に不法占拠されている事例は他にもありますが、領土保全を実効的に担保するためには、「抑止力としての軍隊を持たない弱さ」、「自衛権をことさら狭義に解釈している政府見解」をクリアしなければならないという現実があります。
 これは、憲法改正や自衛隊法改正など国民世論が大きく割れる課題ですから、ご批判を覚悟で書くのですが、国家の構成要素である「国民」「領土」「独立統治(主権)」を守り抜くための法整備とシステム作りが難しい政治環境(世論)が続く限り、解決できない問題です。
 
 過去の衆議院議事録によると、「竹島など他国による領土侵犯に対して、自衛権を発動してこれを回復することは可能か?」という質疑に対して、当時の石破防衛庁長官の答弁は「自衛権発動3要件の2番目に抵触するので、韓国との外交交渉ルートがある限りは無理」という旨のものでした。
 「在外公館や邦人への武力攻撃が発生した場合」にも、「自衛権発動は難しい」との福田官房長官答弁が残っています。
 つまり、当該国との外交交渉ルートがある限りは、自衛権発動3要件の2番目「他に取りうるべき手段が無い場合」に触れ、また在外公館への武力攻撃についても、「日本国に対する攻撃とみなすかどうか」の判断が困難との解釈なのです。外国で拉致されている邦人救出にも、自衛隊は出動できません(米国やドイツは国内法に基づき、軍が奪還作戦を展開しています)。

 私は、憲法に国防軍の設置と内閣総理大臣の判断と国会の承認によって国防軍が国民・領土・主権を守る為に必要な措置をとれる規定を明記するとともに、自衛隊法を改正し、更にテロや大災害など緊急事態に対処できる根拠法も整備すべきだと考えています。
 決して「すぐに軍事力を行使すべきだ」と言っているのではありません。基本的には、外交交渉と国際司法裁判所への提訴などで全ての争いを解決すべきだと考えますが、最悪の事態への実効的な備えを持っているということは、相手国への抑止力になると考えているのです。

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