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安倍官房長官への国立追悼施設建設調査費計上反対の申し入れ

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 今日は、自民党の同僚議員に呼びかけて、官邸に安倍官房長官を訪ねました。
 目的は、来年度予算案に「国立追悼施設建設に関する調査費」を計上することについて反対する意思をお伝えすることでした。

 平成14年12月に、当時の福田内閣官房長官の私的懇談会「追悼・平和祈念のための記念碑等施設の在り方を考える懇談会」が、「最終報告書」を提出し、「戦争犠牲者を追悼する無宗教の施設の建設」を提案しました。

 先週、内閣官房事務当局から説明を聴取致しましたら、平成18年度予算案編成においては、夏の概算要求では計上されなかった同施設建設に関する調査費が、年末の官邸の政治判断によっては計上される可能性も否定できないとのことでした。
 「調査費の計上」イコール数年後の「建設実現」ということになりますから、念には念を・・ということで、官邸に出掛けたわけです。

 現在、私を含めて118名の自民党議員が、国立追悼施設の建設には反対をしています。
 理由は、次のとおりです。

1、福田元官房長官の私的懇談会は、「何人もわだかまりなく訪れられる追悼施設」が必要だとしていましたが、私は、新追悼施設の建設は「新たなわだかまり」を生むと思っています。
 靖国神社にお祀りされている戦没者のご遺族たちは既に新追悼施設建設に反対の声をあげておられますから、まずは、ご遺族のわだかまりが発生します。
 私的懇談会案は、新追悼施設では、敵対した「外国将兵」も追悼対象とすることとしています。この点も、議論を呼ぶと思います。

2、国立追悼施設建設を求める声は、総理大臣の靖国神社参拝に反発する中国や韓国に配慮する意図から出てきたものだと思います。実際に中国や韓国の要人が、外交の場で国立追悼施設建設を求める発言を繰り返しています。
 私は、戦没者追悼の在り方は、純然たる内政問題であると思いますし、日本人の血税の使途について他国から指図されることもあってはならないと思います。
 もしも国立追悼施設を建設したならば、客観的には内政干渉を容認した先例となり、我が国の主権と名誉を著しく傷つけるばかりか、事なかれ主義的な外交姿勢は、諸外国との真の友好・信頼関係確立にも障害となると思います。
 国内的には昭和60年の藤波官房長談話以降、「靖国神社への総理の公式参拝は合憲」との政府見解が維持されており、新施設建設の必然性は見いだせません。

3、私的懇談会は、「無宗教施設」を提案しましたが、「宗教性を排除した追悼」というものが成り立つのかというと、これは疑問です。「追悼」には死者を「慰霊」「鎮魂」するという意味もあり、無宗教の立場では追悼は成り立たず、日本人の伝統的な考え方を否定することになると思います。

4、私的懇談会報告書では、国立追悼施設の「追悼の対象」が極めて曖昧です。
 追悼対象を外国人や民間人に広げ、「追悼対象をどう考えるかは訪れる人の『心の問題』」としています。
 このように追悼対象者が曖昧な国家の追悼施設は、国際的にも異例です。
 また、新施設の追悼対象には、いわゆるA級戦犯も含まれるとされることから、新施設を建設したからといって中国や韓国が内政干渉を止めるとも限りません。

5、「日本の戦没者追悼の中心的施設がどこになるのか」という問題も出てきます。
 私的懇談会報告書は、靖国神社との競合関係を否定していますが、総理や外国要人等の参拝場所をどこにするかという現実の対応を考えると、この問題は避けて通れません。
 既に昭和60年の藤波官房長官談話は「多くの日本人が靖国神社を戦没者追悼の中心的な施設と考えている」としているところであり、新たな混乱を招くことは慎むべきだと思います。

6、靖国神社と別の施設を造ることは、戦没者に対する背信行為ではないかと思います。
先の大戦において尊い生命を捧げられた数多くの戦没者が、国により靖国神社へ祀られ、そこで家族や戦友と再会できることを信じておられたことは、多くのご遺書を読むと明らかです。
 国は、公務死者との厳粛な約束を決して軽視すべきではなく、将来に渡って誠実に守って行く責務があると考えます。

 以上が主要な反対理由ですが、国民の合意なき国立施設建設への財政出動を強行するならば、「税金の無駄遣い」との批判を免れないと思っています。

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