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  3. 永田町日記 平成14年1月~平成14年9月
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「新外相に望むこと」に思う

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 田中外相更迭を受けて改めて思い出すのは、外相就任時の記者会見です。「国益を守ります」と外交当局が為すべき仕事
の本質を的確に打ち出された彼女の姿勢に感動し、大いに期待致しました。
 その後、国民に圧倒的に支持された田中外相の素晴らしいキャラクターによって外交への関心が高まったのは良かったのですが、外交政策に限って言えば、田中外相の考える国益と私が考える国益の違いがあまりにも大きかったので(対中国政策や対米政策など)、それは残念に思いました。
 外相交替の機に、川口新大臣にはこの大きなテーマに正面から取り組み、日本外交のスタンスを見直していただきたいナ、と思います。

 現在の日本は、主権国家でありながら「自立」していないと感じるのは私だけでしょうか。
 国家の最高法規である憲法はGHQによる押しつけ憲法で、「日本の心と言葉を持った日本人の手による憲法」ではありませんし、「教育の憲法」である教育基本法も同様。これらの米国制法規に整合するようにあらゆる法律が作られています。
 また、国家の要件である「領土」「国民」「主権」を守り抜けるだけの自己完結性の高い安全保障体制を持っていません。
 その結果、他国からの内政干渉に対して、主権国家としてまともな抗議も出来ない「ガイアツに弱い日本」が出来てしまいました。

 
 例えば現在、日本の財政赤字の原因として「バラマキ公共事業」が批判され、公共事業の削減や配分見直しが進められています。
 しかし、90年代になされた大型公共事業は、1990年の日米構造協議が発端になっています。当時、日本は1991年度から2000年度までの10年間で430兆円の公共事業を行うことを国際公約させられたのです。
 海部内閣でこの「公共投資基本計画」は閣議了解されましたが、関西国際空港、東京湾横断道路、東京臨海部開発などもこの中に入っていたのです。
 更に、1994年、ナポリ・サミットの日米首脳会談で、村山総理はクリントン大統領に、公共投資計画拡大を約束してしまいました。村山内閣は、公共投資基本計画を1995年度から2004年度で630兆円というものに大幅増額・延長しました。社民党議員が公共事業批判をする度に、私はこの事を
思い出します。
  その後、橋本内閣が計画期間を2007年度までに延長して年度事業規模を縮小し、米国関与の呪縛から日本を解き放とうとしたのです。

 今年1月11日に取りまとめられたOECD対日勧告も屈辱的でした。
 これは、環境保全成果審査の「結論と勧告」というものですが、日本に対して「環境税導入」「環境保全負担金強化」「道路特定財源見直し」「環境目的ODAの拡大」「リサイクル法強化」などが勧告されています。
 自民党熱海市支部長の渡辺行久さんという方が、この件の新聞記事を読まれて「既に日本は世界に多額のODA貢献をし、各課題も各党内で議論を尽くしたり改善の途にあるのに、まだこんな事を言われなければならないのですか?」と怒りのFAXを下さいましたが、私も同感です。

 この他にも、中国からは昨年も、日本の教科書の内容や総理の靖国参拝について、散々な内政干渉を受けました。
 教育は一国の重大な国策ですし、戦没者をどう祀りどのように慰霊するかも明らかに内政事項です。
 外務省は「内政干渉の定義は『強制力』が要件なので、内政干渉には当たらない」というふざけた見解を出し、外相は中国に御用聞きに走る始末。我々日本人は、テレビ番組で「北京オリンピックの大プロジェクトで日本企業の入札は困難になる」と脅す中国人識者のコメントを茫然と聴くしかなかったのです。

 ちなみに中国へのODAは平成13年度で2273億円。日本が世界最大の対中援助国です。
 一方で、中国の軍事費は、この10年連続で伸び続けていて、昨年は17%も伸び、歳出に占める国防費は8%超にもなっています。
 北朝鮮との親密な関係もさることながら、中国がサイバー戦争研究の最高峰であることも脅威の一つです。
 更に、世界各国が莫大なお金を出して除去しようとしているアフガンの地雷も、中国とロシアが輸出国。日本の同盟国である米国が「テロリスト国家」として武器を売らない国々にも、中国は武器輸出を続けてきました。
 また、以前にも書きました通り、日本から援助を受けている中国が、第3国に経済援助をしているのも変。ケニアでは中国が巨大なスタジアムを建てていました。「国威発揚」とのことですが、国連で影響力の大きいアフリカ票対策だと思います。
 この他にも、日本への集団密航検挙数770人中701人が中国人であり、30971人にのぼる外国人犯罪検挙数(平成12年度)のうち54・2%が中国人だという残念な事実もあります。
 中国系「地下銀行」による闇の送金ルートは、マネー・ロンダリングやテロ資金送金の手段として懸念されています。いわゆる中国マフィアによる繁華街からの日本企業追い出しや、香港三合会などによる偽造カード、宝石窃盗犯罪も深刻です。一部の心ない中国人による犯罪で増加する社会的コストを支払うのは、日本の納税者なのです。

 新外相が「国益」ということを真剣に考えて下さるなら、対中ODA拠出に際しては、(1)使い道費目限定、(2)第三国へのODA禁止、(3)国防費増額禁止、(4)武器輸出先限定、など、明確な条件を付けることから始めて欲しいと思います。

 1月に日本が議長国となって東京で開催されたアフガン復興支援会議の席上で、日本は世界最大級の5億ドル(約665億円)の拠出を公約しました。
 現在の日本の景況を考えると決して楽な拠出金ではありませんが、本件は日本の納税者が国民1人あたり520円の負担を誇りに思えた稀なケースではないでしょうか。

 日本の拠出金の使途方針(教育・保健医療・地雷除去・女性の地位向上・難民再定住)が明確で納得できた上、緒方貞子議長が、日本が議長国としてふさわしい
負担をすることを提示するだけでなく、他国にも拠出金上積みの説得をしたことが好感材料でした。
加えて、緒方氏の能力によるところが大きいのですが、今回は「歴史的インパクトを与えた」と評価を受けた会議の「顔」に日本がなれたのです。これは「日本の名誉を守る」という国益に合致していました。
 更にアフガンの安定は、インド、イラン、パキスタンの安全につながり、中東から日本へのシーレーンを守ることになります。また、経済支援による民生安定は、麻薬密輸従事者とテロリストを減らすことにもなります。

 この様に、日本の国益に叶っていることを堂々と納税者に説明出来る経済援助政策こそ望ましい姿だと思います。
 加えて、冒頭に述べました様に、米国製の日本の法制改革、自己完結性の高い安全保障体制作り、そして情報能力を高めること(北朝鮮不審船情報も北朝鮮指導者の息子らしい人の不法入国も米国発信情報だったことは情けない)が、日本の国益に叶い、主権国家としての体制を整える道だと考えます。

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