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中国の『国家情報法』

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 3月1日に安全保障土地法制について書いた時にご紹介した中国の『国防動員法』については、読んでいただいた皆様から、「そんな法律があったことを、知りませんでした」「『国防動員法』の内容を知って、法整備が必要な理由がよく分かりました」など、多くのメールやお手紙を賜りました。有難うございました。

 

 さて、4月20日の警視庁公安部による中国共産党員のシステムエンジニア書類送検を受けて、昨日まで8日連続で、中国等の関与が疑われるサイバーインシデント、各国の脅威認識、リスク対応体制整備の必要性に関して書き続けてきましたが、今日は、ご参考までに、中国の『国家情報法』の条文の一部をご紹介します。

 

 中国の『国家情報法』は、2017年6月28日に施行されました。

 

 国家の安全・利益の擁護を目的として、「国家情報工作」に関して法的根拠を与え、工作機関や工作員の権限、一般の組織や市民に対する工作活動への協力についても定めています。

 

 第2条は、「国家情報工作の法的根拠」を規定しています。

 

第2条;「国家情報工作は、国家全体の安全観を堅持し、国家の重大な策略決定に参考情報を提供し、国家安全を脅かすリスクを防止し、取り除く為の情報支援を提供し、国家の政権、主権、統一、独立及び領土の一体性、人民の福祉、経済社会の持続可能な発展と国家その他の重大な利益を擁護する」

 

 第3条は、「国家情報工作の実施体制」を規定しています。

 

第3条;「国家は、集中統一、分担協力、科学的で高効率な国家情報体制を確立健全化する。中央国家安全指導機構は、国家情報工作に対して統一的な指導を実施し、国家情報工作の方針及び政策を制定し、国家情報工作全体の発展を計画し、国家情報工作の協調メカニズムを建設、完備し、各領域の国家情報工作を統一的に計画・案配し、国家情報工作中の重大事項の決定を検討する。中央軍事委員会は、軍隊情報工作を統一的に指導し、案配する」

 

 

 第7条と第14条は、「組織・市民による工作活動への協力」を規定しています。

 

第7条;「いかなる組織及び公民も、国家情報工作を法に基づき支持、協助、協力し、知り得た国家情報工作の秘密を守らなければならない。国家は、国家情報工作を支持、協助、協力した個人と組織に対して、保護を与える」

 

第14条;「国家情報工作機構が法に基づき展開する情報工作は、関係機関、組織及び公民に必要な支持、協助、協力を提供するよう要求することができる」

 

 第16条は、「工作員の権限」を規定しています。

 

第16条;「国家情報工作機構の工作員が法に基づき任務を執行する時は、国家の関係規定により、承認を経て、相応の証明書を呈示し、立入が制限されている関係地区、場所に立ち入ることができ、関係機関、組織及び個人に対し照会を行い、関連状況を尋ね、関係する保存書類、資料、物品を調べ又は取り寄せることができる」

 

 特に、『国家情報法』第7条と第14条に規定する「組織・市民による工作活動への協力義務」については、『国防動員法』と同様、警戒するべき点だと思います。

 

 2010年7月1日に施行された『国防動員法』は、「満18歳から満60歳までの男性公民及び満18歳から満55歳までの女性公民は、国防勤務を担わなければならない」「必要な予備役要員を確保する」「公民及び組織は、平時には、法により国防動員準備業務を完遂しなければならない」と規定しており、外国在住の中国人も免除対象ではなく国防勤務の対象者です。

 有事の際に、日本国内の中国資本企業や中国人が所有する土地や建物が中国の国防拠点になる可能性を懸念していました。

 

 『国家情報法』でも、日本国内において中国資本企業や中国人が諜報活動を行うことを、国家が保護するようにも読めます。

 4月20日に警視庁公安部が書類送検した中国人は既に出国していますが、同法に基づき、中国政府の保護を受けているのではないかと勘繰るのは間違いでしょうか。

 

 『国家情報法』第2条で「政権」「統一」「領土の一体性」を国家情報工作の法的根拠に挙げていることから、新疆ウイグル自治区、チベット自治区、南モンゴル(内モンゴル自治区)、香港、台湾の住民の言動なども、民間企業や個人による諜報活動の対象となっているのだろうと想像します。

 

 同法の「運用実態」に詳しい有識者の方が居られましたら、是非とも御教授を賜りたく願っています。

 

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