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「イノベーション25」中間とりまとめについて

更新日:

 先月26日に「イノベーション25」策定作業の第一段階である「中間とりまとめ」を発表してから、1ヶ月が経ちました。現在は、最終報告書作成に向けて、奮闘中です。
 既に、中間とりまとめの全文をお読みいただいた方もいらっしゃるかとは思いましたが、私の思いを書かせていただいた「序文」の一部を要約して、掲載します。
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【「イノベーション25」策定に関する安倍総理のご指示】

 2006年9月26日に発足した安倍内閣では、イノベーション担当大臣というポストが新設され、私がその任にあたることとなった。
 組閣から3日後の9月29日、総理から下記内容のご指示をいただいた。

①日本社会に新たな活力をもたらし成長に貢献するイノベーションの創造に向け、医薬、工学、情報工学などの分野ごとに、2025年までを視野に入れた長期の戦略指針「イノベーション25」を策定すべく、来年5~6月を目途に、結論を出してほしい。

②まずは、「2025年までに日本が目指すべきイノベーションの姿」について、学会、産業界などの有識者の英知を集め、来年2月末を目途にまとめてほしい。

③この中間とりまとめの成果をもとに、総合科学技術会議等を活用し、これを実現する戦略的な政策のロードマップを策定してほしい。

 安倍総理からは、「私の言う『イノベーション』とは、単に技術革新だけではなく、新しいアイデアや仕組み、ビジネスプランを含め、広く社会のシステムや国民生活などにおいて、今までとは違う取組みにより、画期的・革新的な成果を上げることなので、その考え方を徹底してほしい」、「技術に追われて、日々の生活や心にゆとりが無くなってしまうようなものでは困る」とのご注文もいただいた。


【私の思い~生活者、納税者の視点】

 安倍総理からご指示を受けた時に、私が最初に考えたことは、「生活者、納税者の視点に立って、科学技術と向き合ってみたい」ということだった。

 2006年度に科学技術政策に投入された国家予算は、3兆5743億円である。民間の研究開発投資額は、17兆8452億円に上る(2005年度)。
 基礎研究、応用研究とそれぞれのステージで、日々新たな研究成果が生まれている。そして、我々は特に意識しないものの、確実にその恩恵にあずかって生活を営んでいる。

 20年前の生活を思い出しながら現在と比較してみれば、よく分かる。
 当時の私は、携帯電話を持っていなかったし、自宅にパソコンなど無かった。今なら、夕方に米国にメールを送信しておけば、翌朝には返信が来ているが、当時は高価な国際電話か郵便を利用していた。
 音楽は、CDではなく、レコードかカセットテープで聴いていた。録画は、DVDやHDDではなく、ビデオテープで行っていた。
 カーナビ装備の無い車中では、いつも道路地図と格闘していたものだった。

 サービス産業も、技術革新の成果を活かしながら進歩を続けてきた。
 現在では、宅配便で翌日には荷物が着くし、コンピューター・ネットワークにより、自分が送った荷物が今どこにあるかも調べてもらえる。留守にしていて荷物を受け取れなかった時も、ドライバーの携帯電話に直接連絡して再配達してもらうことが可能になった。 
 タクシーの配車も、GIS(地理情報システム)やGPS(人工衛星を使った測位システム)を活用している会社では、とても早くなった。
 引越しの見積もりや不用品回収の申し込み、転居に伴う諸手続きも、インターネットを使えば、真夜中でもできる。
 この20年間で、私たちの生活は、格段に便利で豊かになった。

 これらの変化は、「生活者」のニーズを的確に捉えて、研究開発着手から製品化までに要する長い年月とコストに耐えてきた製造業者や、新技術を活かしたサービス向上に工夫を重ねてきたサービス業者の努力の成果である。
 加えて、「納税者」が支え続けてきた政府の科学技術政策の成果が、国民生活に還元された結果でもある。

 だからこそ、私は、これからの20年間で政府が行おうとする技術革新や社会システム刷新の取組みも、基本的には、「生活者・納税者の夢や切実な願い」に立脚すべきであると考えているのだ。

 昔に較べると、物質的に満たされた時代。一方で、地球環境の悪化、ボーダレス化によるテロや感染症拡散の脅威、新技術を悪用した新手の犯罪の多発、少子高齢化の急速な進行等、多くの不安要因が我々を取り巻いている時代。
 「現代の日本人は、何を願っているのか?」と考えてみた。
 例えば、「健康に恵まれて長寿を楽しむこと」、「安全で安心な生活を送ること」、「仕事も家庭生活も充実していること」、「努力が正しく報われること」、「力強い日本経済に支えられた福祉が保障され、老後にも不安がないこと」、「加齢や障害や性別等によって、ハンディキャップを感じなくて済むこと」、「日本人であることに誇りを持てること」、「心豊かな優しい人々に囲まれて暮らせること」等々・・・。

 まだまだ沢山の願いが有るとは思うが、内閣府の「イノベーション25ホームページ」にお寄せいただいたご意見を全て拝読してみて、私なりに受け止めさせていただいた国民の皆様からのメッセージである。
 生活者・納税者たる国民が望む日本の姿が、技術革新や社会システムの刷新によって、より早く確実に実現できるのであれば、政府は早急にそのための挑戦を始めなければならない。


【闘え、日本!~国民とともに勝ち取る未来~】

 「イノベーション25」は、決して遠い未来の「夢物語」ではないのだ。単なる「未来予測」でもない。ロードマップが完成する今夏から20年近い年月をかけて、日本国民と政府が力を合わせて「着実に創っていく日本の未来」である。
 そんな気概を持って、黒川座長をはじめ戦略会議委員の皆様や特命室のスタッフとともに、第二段階の作業に着手したいと張り切っている。

 最後に付言しておきたいことがある。
 多くの方々から、「閉塞感のある時代だからこそ、夢のある提言をして下さい」というご激励もいただき、「中間とりまとめ」には、夢のある未来像を描く努力はしたつもりだ。
 しかし、私は、その実現への道のりは相当険しいものになると思っている。

 当然のことながら、現在の日本国民が直面している様々な課題は、科学技術の力だけで夢のように霧消してしまうわけではない。
 経済的困窮や介護疲れから高齢者夫婦が無理心中をしてしまうといった悲報に接する度に、この思いを強くする。将来、多機能介護機器の開発や生活支援制度の拡充をしたとしても、技術や制度の恩恵が確実にご本人たちに届く社会の仕組みや、地域社会で見守り支える意識が育たないと、気の毒な状態の方々がひっそりと社会の片隅に取り残されてしまう。
 だからこそ、安倍総理は、イノベーションを「技術革新」と狭義では捉えず、「社会システムの刷新」と並行させることで、恩恵を確実に国民生活に還元できる仕組み作りに拘っておられるのだろう。
 戦略会議でも、本来は「政治」が本気で解決しなければならない喫緊の課題から目をそらすべきではないことを前提に、議論を続けてきた。

 また、「力強いイノベーションが起きるように国の形を変える」ことに対して、「国民のコンセンサス」を得るためにも、様々な困難が予想される。

 技術革新は、生産性や利便性の向上に寄与する一方で、その「影」への不安も与える。
 例えば、ウェアラブル個人端末機器によって、高齢者や子どもの外出中の危険を軽減することやキャッシュレス社会を作ることは可能だろうが、個人情報の扱いについてのコンセンサスを得ることや、オンライン犯罪への不安を克服することが重要になってくる。

 また、イノベーションを支えるのは人材であり、黒川座長の言葉を借りると「出る杭を伸ばす社会」を創らなくては、熾烈な国際競争の中で生き残ってはいけない。
 ところが、これまでの日本社会は、「ジェラシーの文化」、「行き過ぎた結果平等」、「横並び主義」などといった言葉で表現されてきた。過去の教育政策の議論でも、「能力別クラス」や「飛び級制度」については、大きな反発があった。

 「日本人の価値観の大転換」を求めることになるかもしれない新たな挑戦は、政府が傷だらけになる覚悟と勇気を持って国民に問題提起をし、目指すべき日本の未来像を国民と共有する努力をしなければならない。
 納税者の理解と支えを得ずして、政府が力強く政策を遂行することなど叶わないのだから。




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【今後の予定】

 今年5月末を目途に、最終報告となる「イノベーション25」、つまり、「イノベーションを実現する戦略的な政策のロードマップ」作りを行う。

 総理のご指示は、「戦略的な(strategic)」政策ロードマップの作成である。
 今後、より具体的に「実現すべき政策(戦術・tactics)」を洗い出した後は、私たちが目指す日本の姿を実現するために、「政策を全局的に運用する方法(戦略・strategy)」を示せる計画としなければならないと考えている。

 「イノベーション25」策定後は、経済財政諮問会議に報告し、6月に決定される予定の「骨太の方針2007」への反映を目指す。
 2025年に向けての最初の1年が、来年から始まる。ロードマップに従って、予算措置、税制改正、社会システム刷新のための法制度改革などに、精力的に着手していく。
 
 また、「イノベーション25」は、その全ての項目の実現までに、定期的なフォローアップとリライトが必要なものであると考える。
 科学技術の進歩は日進月歩であり、日本を取り巻く国際環境の変化等により、ロードマップの修正が必要な状況も出てくるだろう。
 府省の枠を超えた施策の推進体制を整備し、PDCA(Plan→ Do→ Check→ Action)サイクルを確立する必要がある。これは、今秋以降の課題である。



【「中間とりまとめ」作成の工程報告】

2006年9月29日;
 安倍総理から「イノベーション25」策定の指示。

2006年10月5日;
 内閣府内に「イノベーション25特命室」を設置し、専従職員を配置。

2006年10月26日;
 有識者7名を委員とする「イノベーション25戦略会議」発足。総理官邸に於いて、安倍総理にもご出席いただき、第1回会議を開催。以後、2月末までに8回開催。

2006年10月27日~12月31日;
 内閣府HPで国民の皆様から意見募集。国民からの提案は、2007年1月16日の第5回戦略会議に提出し、「中間とりまとめ」の随所に活かさせていただいた。

2006年10月2日;
 私から、日本の科学者コミュニティの代表機関である日本学術会議に対して、「イノベーション25」策定への協力を要請。
 後日、日本学術会議内に、「日本学術会議イノベーション推進検討委員会」を設置していただき、更に、2200名の日本学術会議会員や協力学術研究団体に対して、「推進するべきイノベーション」に関する提案書作成を呼びかけていただいた。

2007年1月25日;
 日本学術会議より、日本の科学者の英知を結集した報告書「科学者コミュニティが描く未来の社会」を拝受。

2007年1月~2月;
 大臣室に於いて、内閣官房情報通信技術(IT)担当室、総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省から、政策提言のヒアリング。

2007年1月~2月;
 文部科学省科学技術政策研究所の「科学技術予測調査」の成果(2500名の専門家が参加し、各技術について「技術的実現時期」と「社会的適用時期」を表示するデルファイ法を用いたもの)を、「中間とりまとめ」の技術例示に反映。

2007年2月26日;
 「イノベーション25」中間とりまとめの決定と安倍総理への報告。

以上、ご協力いただいた全ての皆様に、心から感謝を申し上げたい。

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