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2020・9・11・「NHK改革」の方向性

更新日:

 私ほどNHK(日本放送協会)職員の方々に嫌われてきた総務大臣は居ないと思います。

 

 平成29年夏に私が総務大臣を退任した時にはNHK職員の皆様が祝杯を挙げたという話も聞いていますし、昨秋に総務大臣に再任された時には失望の声が広がったということも知っています。

 

 番記者の皆様はとても友好的で、素敵な方々に恵まれてきましたが、前回の総務大臣在任中から、総務省に設置した「放送を巡る諸課題に関する検討会」の場で様々な発言をしてきましたので、NHKの管理職の皆様からは、NHKに対して厳し過ぎる大臣だと思われているのでしょう。

 

 それでも、「NHK改革」は絶対に必要だと考えています。

 日本にとって大切な「公共放送」の担い手という存在だからこそ、不断の改革が必要なのです。

 

 NHKは、『放送法』第15条に基づいて、「公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内基幹放送(略)を行うとともに、放送及びその受信の進歩発達に必要な業務を行い、あわせて国際放送及び協会国際衛星放送を行うこと」を目的として設置されている特殊法人です。

 

 多くの方々が負担して下さる受信料によって運営されている法人ですから、受信料を負担している方々の納得感や信頼性は欠かせないと考えます。

 

 NHKに対しては、これまでも、「受信料が高い」「営業の人が強引だ」「予算規模が高止まりしている」「子会社を含むグループ経営が肥大化している」など、様々な批判が向けられてきました。

 

 今年1月に就任された前田晃伸会長は、就任後初となる『中期経営計画(案)』(来年度から3年間の計画)を纏めるに当たり、「スリムで強靱なNHK」を掲げ、番組編成や放送波の削減などを通じて支出規模の圧縮に取り組むことなど、構造改革への決意を示されました。

 

 特に衛星やラジオの「放送波の削減」については私の持論でもありましたので、前田会長が、これまでにない改革姿勢を示されたことについて、率直に敬意を表し、その実現を期待しています。

 NHK内部には、前田会長の改革案に対する反発が強く、相当な苦労をしながら奮闘しておられると仄聞していますが、意思の強い方なので、頑張って下さると思います。

 

 来週には安倍内閣が終わりになりますので、来年の通常国会に向けて解決策の検討を進めるべく、私が急いでいた幾つかの構造的課題を書いておきます。

 

 第1に、NHKの「非効率性」として私が度々指摘してきたことですが、受信料収入の11.1%、約780億円(令和2年度予算額)に及ぶ「営業経費」の高さです。

 受信料の徴収に、多額の受信料が使われてしまっています。

 

 NHKにしてみれば、テレビ受信機を設置する世帯と個別に「契約」を結ばなければならないという『放送法』の立て付けが訪問主体の営業活動の原因だと言いたいのかもしれませんが、現行法の下でも、訪問によらずに視聴者の皆様との接点を構築し、訴訟対応も強化しながら、公平負担を徹底するべく工夫することはできると思います。

 とりわけ、新型コロナウイルス感染症の影響拡大により、社会全体に「非接触型」の営業活動が広がっている中で、民間の事例も参考に、情報通信技術の活用や視聴者の皆様のご理解を得る活動を重点化するべきです。

 

 第2に、NHKの「肥大化」として批判されている子会社や関連会社を含めた「グループ経営改革」が不十分だということです。

 

 「NHKグループ全体の人員数は、着実に減少している」との反論がなされています。

 確かに、昭和54年度には16920名でしたが、令和2年度には10343名になっています。

 

 しかし、子会社や関連会社の現状については、まだ改善の余地が大きいと思います。

 

 NHKの子会社に、イベントの企画などを行う会社がありますが、58名の社員のうち11名が役員だと知った時には、驚きました。

 もちろん11名の役員すべてがNHKのOBやOGではないでしょうし、業態に応じて在るべき役員の比率は違うでしょう。

 それでも、子会社や関連会社は、NHK本体の業務を効率化するために業種毎に専門性を発揮する「実働部隊」であるはずですから、「筋肉質」の組織を目指していくべきだと考えます。

 

 加えて、高止まりしている「随意契約比率」の見直しや、業務の「分割ロス」につながりかねない細分化された子会社・関連会社の構成についても、大胆な改革が不可欠です。

 

 第3に、NHKの「財務体質」にも課題があると感じています。

 

 NHKは、「新放送センター」の建設に約1700億円の積立金を確保しているほか、令和元年度末で1280億円の繰越金を計上しています。

 

 一般論として申し上げれば、民間企業が利益剰余金などの「内部留保」を必要以上に貯め込むことは、「成長のための投資」や「株主に対する適切な還元」に反し、好ましくないとされます。

 NHKの場合、「費用」に基づいて「収入」を決める総括原価方式であり、番組制作や機材の購入への投資は拡大しやすい傾向にあります。

 「株主」に当たる国民・視聴者への「還元」、言い換えれば「受信料水準の引き下げ」について、真剣に検討していただきたいと希望します。

 

 もしも前田会長が検討しておられる放送波の削減が実現したら、「新放送センター」の建設費用や放送設備費用も削減できるはずです。

 

 第4に、少し前述しましたが、「受信料水準の引き下げ」が不十分だということです。

 

 今年10月からのNHKの受信料は、地上契約で月額1225円、衛星契約で月額2170円となります。

 

 衛星放送を観たくないのに、最初から衛星アンテナが設置されている集合住宅に居住されている方の多くは、年間2万6040円もの受信料負担を「割高」だと感じておられるのが本音ではないでしょうか。

 この「衛星付加受信料」については、「受動受信問題」と呼ばれていますが、その価格の一部が8K放送への投資によって「付加」されていると聞いて、納得できる人も多くはないでしょう。

 

 衛星波の在り方については、番組編成の「重複感」を排除するとともに、8Kについては、医療分野などでの活用で収益化を図ることなども含め大胆な見直しを行う必要があり、それに応じて、「衛星付加受信料」についても、撤廃を含めた引き下げが必要だと考えます。

 

 残念ながら、現段階の次期『中期経営計画(案)』では、受信料については、「現行の料額を維持する」とされています。

 

 しかし、国民・視聴者の皆様にとって「公平感」と「納得感」があり、十分に「低廉な水準」となるように、『中期経営計画』の対象期間である2021年度から2023年度までに様々な合理化を実行していただき、その成果を国民・視聴者の皆様に還元することを最優先に考えて取り組んでいただきたいと願います。

 

 第5に、最大級の課題ですが、「通信・放送融合時代における受信料制度の抜本的見直し」の必要性です。

 

 これは、NHK側の問題ではなく、政府が検討を進め、国民・視聴者の皆様のお声を十分に伺い、国会でご議論をいただき、『放送法』の改正まで行わなければ解決できない課題です。

 

 通信・放送融合時代を迎え、若年層を中心にテレビ受信機を設置しない世帯が増加し、インターネット上の動画配信サービスの視聴が拡大するなど、テレビ視聴を巡る環境は大きく変化しています。

 

 しかしながら、『放送法』第64条は、「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」と規定しており、受信料制度は、あくまで「テレビ受信機の設置」が基準となっています。

 ほぼ全ての世帯がテレビのみを通じて放送番組を視聴していた時代には、「負担金」として一定の合理性があったと思います。

 

 しかし、今や、テレビ放送用チューナーを搭載していない大型ディスプレイパネルが販売されています。

 デバイスを挿して、映画やドラマなど、無料や有料の様々なサービスを楽しむことができます。

 

 「テレビは持っていないけれども、同時配信サービスでNHKの番組は視聴したい」と希望される方に適切にサービスを提供することができないといった課題が顕在化しており、制度の見直しが不可欠になってきています。

 

 現在、総務省の「放送を巡る諸課題検討会」で、諸外国の公共放送制度も参考にしながら、有識者の先生方や放送関係者の皆様に議論していただいている最中です。

 

 色々と書きましたが、「受信料水準」や「業務内容」を形作る『NHK予算』は、国会の議決によって承認されるものであり、総務大臣には、予算案に『意見』を付することしかできません。

 勿論、検討会で結論が固まれば、いつでも改革に向けて『放送法』を改正できるよう、準備は進めています。

 

 その意味では、私の意見に法的な強制力があるわけではありませんが、現在は『放送法』を所管している立場で申し上げれば、NHKには、公共放送として付託された国民・視聴者の皆様の期待に応え、「在るべき方向」に向けて進んでいただきたいとの思いを日々強くしています。

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