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2020・5・31・インターネット上の「権利侵害」への対策推進は必要

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 先日(5月26日)の閣議後記者会見では、記者さんから、「女子プロレスラーの木村花さんが、SNS上で誹謗中傷を受けた後に亡くなったということですが、『プロバイダ責任制限法』の絡みで、今後の対策など、大臣のお考えをお願いします」というご質問をいただきました。

 

 私は、木村花さんのご逝去について謹んで哀悼の意を表させていただいた上で、既に総務省で運用上の改善方策について検討を開始していた『プロバイダ責任制限法』に関しては、次のように答えました。

 

 「ネット上の権利侵害情報の削除や、匿名の発信者の情報開示手続は、『プロバイダ責任制限法』において規定されております。ネット上の誹謗中傷を抑止し、被害救済を適切に図る為には、発信者の情報開示の手続について適切に運用されることが必要でございます」

 

 「総務省は、先月(4月)、有識者会議を設置いたしました。『プロバイダ責任制限法』に基づく開示対象となる発信者情報の追加、開示手続を円滑化する方策などについて検討を開始いたしました。匿名の者が『権利侵害情報』を投稿した場合に、発信者の特定を容易にする為の方策などについて検討する予定でございます。この検討結果を踏まえて、制度改正も含めた対応を、スピード感を持って行ってまいりたいと存じます」

 

 私の発言に対しては、出来るだけ早期の対応を求める激励の御意見を多数お寄せいただきましたが、他方、一部メディアでは「表現の自由を侵害するのか」「木村花さんの件に便乗して、政権批判を封殺する法規制をするつもりではないか」といった御意見も報じられていると聞き、いずれも全く的外れな御心配であることをお伝えしたいと思いました。

 

 第1に、総務省で検討している内容は、決して皆様の「表現の自由」を侵害するものではないということです。

 

 既に最高裁判決でも明らかになっているように、「公共の福祉」による制限はあるものの、「表現の自由」は、日本国憲法第21条で手厚く保障されています。

 

 問題としているのは、「他人の権利を侵害する情報」の発信であり、民事法上では不法行為として「損害賠償責任」を負い、刑事法上では「脅迫罪」「名誉毀損罪」「侮辱罪」に該当しうる「違法情報」です。

 

 「違法ではない情報」については、『プロバイダ責任制限法』の対象には含まれません。

 

 総務省が行っている検討は、権利を侵害された被害者が、匿名の加害者を特定して、損害賠償請求などを通じて責任を追及する為に必要な情報に、より容易にアクセスすることができるようにすることによって、インターネット上の権利侵害に苦しめられている方々の人権を救済する道を開こうとするものです。

 

 第2に、「政権批判を封殺する法規制」など、出来るはずがありません。

 

 繰り返しになりますが、御批判も含めて内閣や国会に対する意見表明も、日本国憲法第21条により、極めて重要な基本的人権である「表現の自由」として保障されています。

 政府への御批判について、政府がその発信者を調査することなど、『プロバイダ責任制限法』でも認められておらず、あり得ないことです。

 

 第3に、総務省は、「木村花さんの件に便乗」して検討を始めたわけではありません。

 

 昨年5月に、私が本部長を務めていた自民党サイバーセキュリティ対策本部では、一昨年4月の『第1次提言』に記した多数の政策の中から、特に政府に検討を急いで頂きたい課題を深掘りして議論し、『第2次提言』として取りまとめ、安倍晋三総理と菅義偉官房長官(政府のサイバーセキュリティ戦略本部長)に手交し、実現を強く求めました。

 

 この『第2次提言』の中で、「偽情報を意図的に流通させる行為に関する対策の検討」の項に、「情報の完全性が悪意をもって操作される行為」について、「今後、『報道の自由』『表現の自由』に留意しながら、国際的な議論を深めるとともに、欧州の動向も参考にしつつ、『ファクトチェックの仕組み』や『プラットフォーム事業者との連携』等の自浄メカニズムなどについても、検討を深めることが適当である」と記し、ドイツの『ネットワーク執行法』(侮辱・悪評の流布・中傷・犯罪組織やテロ組織の形成など19類型の犯罪について、SNS事業者に対して、申告受理後、早期の削除やアクセスブロックの義務を課し、違反者に最大5000万ユーロ/約65億円の過料等を定めた2017年10月1日施行の法律)の内容も掲載しました。

 

 その後、昨年9月に総務大臣に再度就任しましたので、自ら本部長として取りまとめた『第2次提言』のうち、総務省として取り組めることについては、積極的に対応を進めることとしました。

 

 フェイクニュースや偽情報への対応については、総務省の「プラットフォームサービスに関する研究会」において御議論いただいていましたが、インターネット上の海賊版対策の必要性の高まりも踏まえ、有識者による「発信者情報開示のあり方に関する研究会」を立ち上げ、本年4月30日に第1回会合を開催し、検討を始めていたところでした。

 

 総務省における具体的な検討の内容についても、説明いたします。

 

 インターネット上の「権利侵害情報」については、被害者がプロバイダに削除を求めても、削除した場合の責任の所在が不明確であることからプロバイダが削除を躊躇する場合も多く、発信者が匿名である場合の権利救済の手段が無いといった課題が指摘されてきました。

 

 そこで、プロバイダが「権利侵害情報」を削除した場合の免責要件や、発信者の情報を開示できる権利を明確化する為、総務省が所管する『プロバイダ責任制限法』(正式名称は『特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律』)が定められました。

 

 しかし、『プロバイダ責任制限法』の目的を果たす為には、幾つかの課題が残っています。

 

①IPアドレスが保存されていないケースなど、発信者を特定することが困難な場面が増加していること。

 

②権利侵害が明白な場合であっても、プロバイダが、発信者情報を裁判外で開示しないケースが多いこと。

 

③発信者特定の為の裁判手続に時間がかかり過ぎて、被害者の負担が大きいこと。

(現在は、「IPアドレス・タイムスタンプの開示」「氏名・住所の開示」という2段階の裁判手続が必要)

 

④海外への訴状の送達手続に時間がかかること。

(訴状送達に半年~1年。判決が出るまでには、更に時間がかかる)

 

 上記③と④の課題は、法務省で『民事訴訟法』改正を検討していただかなければ解決しません。

 

 しかし、①と②の課題については、総務省の有識者会議で『プロバイダ責任制限法』に基づく「開示対象となる発信者情報の追加」や「開示手続をより円滑にする為の方策」などについて検討を進め、必要な省令改正や法改正を行うことによって対応できると考えています。

 

 現在、自民党でも、政務調査会デジタル社会推進特別委員会に「インターネット上の誹謗中傷・人権侵害等の対策プロジェクトチーム」が立ち上げられ、議員立法を含めた検討が進められているようですので、「法改正は議員立法で」「省令改正は総務省で」といった役割分担も可能かと思います。

 

 インターネット上の匿名の書き込みであっても、『プロバイダ責任制限法』に基づき、事後的に身元が特定され、被害者から損害賠償請求を受けたり、刑事責任に問われたりする可能性があることが、広く国民の皆様に伝わることによって、「権利侵害」にあたる書き込みに対する一定の抑止効果が期待できます。

 

 匿名で他人の権利を侵害する行為は、人として卑怯で、許し難いものです。

 根本的には、「情報リテラシー」の中でも特に「情報モラル」の向上に資する学校教育や社会教育の充実が重要だと考えています。この点は、文部科学省における積極的な対応に、大いに期待しています。

 

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