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在宅介護利用者の投票機会を確保する為に

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 自民党では、所属国会議員が「議員立法」に取り組んでも、法律案の国会提出までのハードルが他党よりも高いことについては、当然のこととして理解してきたつもりです。

 

 現在は、与党でもあり、連立政権でもありますから、全ての法律案の国会提出に向けては、全ての自民党議員と公明党議員の賛同を得て、与党2党で党議決定することが必要です。
 この手続きには、与党議員が一致して国民の皆様に対する責任を担うという意義があります。

 

 しかし、「議法(議員提出法案)」については、「閣法(内閣提出法案)」と異なり、以上の要件に加え、「可能な限り野党の賛成も得た上で、提出をすること」というのが自民党国会対策委員会の方針であるようです。
 野党の反対を押し切って国会に提出すると、付託された委員会で野党の反発を招き、閣法の審議に悪影響を及ぼすということが理由なのだろうと思います。

 

 そういった事情は理解した上でも、我慢の限界を超えかけていた1件があります。

 

 一昨年10月22日が投票日だった衆議院議員選挙が終わるのを待ちかねて起草作業を始め、一昨年12月末には書き上げた『公職選挙法改正案』が、未だに国会への提出ができない状態です。

 

 昨年の1月から自民党選挙制度調査会(逢沢一郎会長)で審査をしていただき、昨年の通常国会会期中には与党2党で党議決定していただきました。
 野党各党にも、逢沢一郎会長が自ら説明をして下さり、特に反対意見も無いようだったと聞き、起草者として深く感謝をしていました。

 

 少なくとも昨秋の臨時国会には提出でき、可決したならば、今年4月の統一地方選挙や7月の参議院選挙から適用されることを楽しみにしていました。

 

 私が書いた『公職選挙法改正案』の内容は、「在宅介護サービスを利用している方の中で、外出や歩行が困難な状態にある要介護3以上の方々を、郵便投票の対象に追加する」というものでした。

 

 現行の『公職選挙法』では、「一定規模以上の施設で、都道府県選管が指定する病院・老人ホーム・身体障害者支援施設等」では、その施設内で投票を行うことが可能です。
 対象を「一定規模以上の施設」としているのは、「公正な選挙」を担保する為に、不在者投票管理者・投票立会人の立会いの下で投票しなくてはならないからです。全国で2万箇所以上が指定施設になっています。

 
 他方、在宅介護を受けておられる方々については、「身体に重度の障害があるもの」と認められた方に限って「郵便等投票」が可能とされているだけです。
 平成15年の『公職選挙法』の改正で、「要介護5」の方々に限っては、「身体に重度の障害があるもの」として郵便等投票の対象者に加わりました。

 

 しかし、私は、現行法では郵便等投票の対象者に該当しない「要介護4」や「要介護3」でも、「投票に行きたくても、実際には投票所に行くことが難しい方々」がいらっしゃることを承知しています。

 

 昨年4月に他界した母がそうでした。
 母は、普段は車椅子で、杖を使えば数メートルは歩けるという状態でした。数年前に心停止状態から蘇生した母は、心臓に負担をかけられず、医師から外出は禁止されていました。

 
 ところが、3年前の参議院議員選挙の投票日に、「私は、投票に行きたい」と言い出したのです。
 私が子供の頃から、両親は「投票は国民の権利であり、義務だ」と言って欠かさず投票に行っていたのですが、「どう考えても、今の状態の母が投票所に出向くことは無理だ。また心停止になったり、怪我をしたりするのではないか」と思いました。
 しかし、当時の私は総務大臣で、総務省の自治行政局選挙部は、選挙管理執行も担っています。投票率アップを呼びかけるべき立場だった私が、母に「投票所に行くのは諦めて」と言うわけにもいかず、困り果てました。

 

 全候補者の政策が記された『選挙公報』を真面目に読み込んだ上で投票を望んでいる母を止めることはできず、投票所までは知人に車で送っていただくことにしました。
 ところが、「投票の秘密」を守る必要から、知人は投票所の入り口まで母を送ることはできても、記載台まで同行することはできません。
 投票日の夕方に実家に立ち寄りましたら、案の定、投票所内で転倒して怪我をした母が、足に包帯を巻いていました。骨折しなかったことが不幸中の幸いでした。

 

 この1件から、「歩行が困難なご高齢の方々の投票機会の確保」について強い問題意識を持ち、その後、実態調査や有識者の先生方による検討もしていただきました。

 

 有識者による研究会の結論は、「要介護4の方はもとより、要介護3の方についても、寝たきり等に該当する方が相当の割合で居られること」、「選挙人等にとって分かりやすい制度とすべきこと」から、「要介護3全体を、郵便等投票の対象とすることが適切」ということでした。

 

 『公職選挙法』については、平成15年改正が議員立法によって行われた経緯を考慮すれば、更なる法改正も、議員立法で行うことが求められます。
 総務省で法律案を書いて閣法にすることは困難だと判断しましたので、一昨年8月の大臣退任を好機と考え、一昨年10月の選挙後すぐに議員立法の作業に取り組んだのです。

 

 日本国憲法第15条には、「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する」と記されています。

 

 高齢化が進み、在宅介護サービスを選択される方が増えている中、選挙権を行使するかどうかは各人のご判断だと思いますが、「権利を行使しやすい環境を用意すること」は大切なことだと考えます。

 

 現在に至るまで提出が認められなかった事情は、憲法審査会における憲法改正国民投票法に係る議論への悪影響が懸念されるということだと仄聞しました。

 

 今年の通常国会でも、8月の短い臨時国会でも、何とか提出できないかと考え、自民党の森山裕・国会対策委員長にお願いを続けてきました。
 森山委員長が野党各党の国会対策委員長に協力の依頼をして下さり、次回の国会以降で提出が認められる可能性も出てきました。

 

 日本維新の会にも、親御さんのことで、私と同じ経験をした議員が居られました。
 過去に取り組んだ議員立法の中で、最も短期間で起草したのに、提出までに最も長期間を要している苦しい案件ですが、諦めずに頑張ります。

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