早苗コラム

7期目の永田町から 平成27年1月~連載中

2016年03月20日

放送法②:現行の「放送法」と「電波法」は違憲立法なのか?

 3月14日の参議院予算委員会では、福島みずほ委員が、電波法第76条の規制について、「表現の自由」との関係から「憲法違反です」と発言しておられました。


 今年2月からの衆議院の審議の中でも、「電波法」と「放送法」と「日本国憲法」の関係が議論となりました。


 果たして、電波法第76条や放送法第174条の規定は、日本国憲法第21条が保障する「表現の自由」に反する違憲立法なのでしょうか?


 違憲立法審査権は、日本国憲法第81条の規定により最高裁判所が持つものですが、本件について、これまで私が国会で答弁してきた内容のポイントを書かせていただきます。


 日本国憲法第21条は、
「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
と規定しています。


 一方で、日本国憲法第12条は、
「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
と規定しています。


 放送法第1条は、(放送法の目的)として、
「次に掲げる原則に従って、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。」
とした上で、
二 放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること
三 放送に携わる者の職責を明らかにすることによって、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること
と規定しています。


 すなわち、放送事業者が自らの責任において編集する放送番組は、放送事業者が自主的、自律的に放送法を遵守していただくということになります。


 その上で、放送法第4条は、(番組準則)として、
「放送事業者は、国内放送及び内外放送の放送番組の編集に当たっては、次の各号の定めるところによらなければならない。」として、
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
と規定しています。 


 この第4条(番組準則)を含む「放送法違反」に対する放送法と電波法の規定は、次の通りです。


 「ソフト事業者」の放送法違反については、
放送法第174条に、
総務大臣は、放送事業者(特定地上基幹放送事業者を除く。)がこの法律又はこの法律に基づく命令若しくは処分に違反したときは、3月以内の期間を定めて、放送の業務の停止を命ずることができる。
と規定されています。


 ソフトとハードの両方を備える「特定地上基幹放送事業者」(地上波テレビ、ラジオ、コミュニティFM)の放送法違反については、
電波法第76条第1項に、
総務大臣は、免許人等がこの法律、放送法若しくはこれらの法律に基づく命令又はこれらに基づく処分に違反したときは、3箇月以内の期間を定めて無線局の運用の停止を命じ、又は期間を定めて運用許容時間、周波数若しくは空中線電力を制限することができる。
と規定されています。


 ただし、放送法第174条(放送の業務停止命令)や電波法第76条(無線局の運用停止命令等)の運用については、これまで何回も答弁させていただいている通り、
①法律の規定に違反した放送が行われたことが明らかであることに加え、
②その放送が公益を害し、放送法の目的にも反し、これを将来に向けて阻止することが必要であり、かつ、
③同一の事業者が同様の事態を繰り返し、かつ、事態発生の原因から再発防止のための措置が十分でなく、放送事業者の自主規制に期待するのでは、法律を遵守した放送が確保されないと認められる、 
といった「極めて限定的な状況のみに行うこと」とするなど、「極めて慎重な配慮のもと運用すべきである」と、従来から取り扱ってきています。


 福島みずほ議員や一部の学者やジャーナリストの方々が私の答弁を「憲法違反」だと主張しておられる理由は、「放送法第4条が規定する『番組準則』は、単なる『倫理規範』であり、総務大臣が言うような『法規範』ではないはずだ。第4条に違反したことをもって放送法第174条や電波法第76条が適用される可能性があるのならば、言論の自由を保障する憲法第21条に違反する」ということなのだろうと思います。


 つまり、放送法第4条が「倫理規範」なのか「法規範」なのかというところが論点となります。


 今年2月の衆議院の審議でも、民主党の奥野総一郎議員、中島克仁議員、維新の党の高井崇志議員が、放送法第4条は「倫理規範」や「努力目標」だとして、「法規範性」を否定しておられました。


 しかし、前稿にも書いた通り、放送法は民主党政権だった平成22年に抜本改正されており、その審議の際に、この論点は整理されています。


①放送法第4条に規定する番組準則が「法規範性」を有すること、
②番組準則に違反した場合には、総務大臣は、放送法第174条に基づく放送の業務停止命令や電波法第76条に基づく無線局の運用停止命令ができること、
③運用にあたっては、極めて限定的な状況のみに行うこととするなど、極めて慎重な配慮のもと運用すべきであること、
については、改正放送法案の採決日だった平成22年11月26日の参議院総務委員会において、平岡秀夫総務副大臣が答弁しておられます。


 放送法第174条の「放送の業務停止命令」も民主党政権の政府案で新設されたものです。


 放送法第4条の「法規範性」を明言された政府答弁の後に、日本共産党以外の全会派が賛成して可決成立した「改正放送法」ですから、今年になって民主党議員から第4条の「法規範性」を否定する発言が出ることに納得がいきません。


 政権交代はありましたが、議論になっている該当条文の文言は同じです。


 他の法律についても同様ですが、私が法律の条文について答弁準備をする時に読み込んでいるのは、各法律の「逐条解説集」です。
 放送法の逐条解説集で総務省に備えてある最新版は平成24年版で、平岡副大臣の御答弁も掲載されています。


 そもそも事の始まりは、2月8日の衆議院予算委員会で、民主党の奥野総一郎議員から、
「放送法の174条の業務停止や電波法76条については、こうした4条の違反については使わないということで、今、もう一度明確にご発言いただきたいんですが」
とご質疑をいただきましたので、
「どんなに放送事業者が極端なことをしても、(中略)公共の電波を使って、全く改善されない、繰り返される、という場合に、全くそれに対して何の対応もしないということをここでお約束するわけにはまいりません」と答えたことでした。


 現在は放送法と電波法を所管する大臣である私が、現行法に規定されている条文を、「何が起きたとしても、未来永劫、絶対に適用されない無効なもの」とする答弁をするわけにはいかないと考えています。


 これまで、放送法第4条違反として放送法第174条や電波法第76条第1項を適用した例はないのです。


 放送法では、
①放送事業者は、放送番組の編集の基準を定め、これにしたがって放送番組の編集をすること(第5条第1項)、
②放送事業者は、放送番組審議機関を設置し、そこで放送番組の適正を図るために必要な事項を審議すること(第6条)、
も義務付けられており、「放送事業者の自主自律により放送番組の適正を図ること」が規定されています。


 今後とも、放送事業者の皆様には、放送法第5条や第6条の自主的な取組みをもって自律的に放送法を遵守していただくということが基本です。


 先記しました通り、現行法が合憲か違憲かということに関しましては、最高裁判所のご判断になります。
 


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