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北朝鮮ミサイル発射に対する政府の対応ぶりについて

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 本日7月5日、午前3時30分頃(発射推定時刻)、4時頃、5時頃、7時10分頃、7時30分頃、8時20分頃・・と6回に及ぶ北朝鮮による弾道ミサイル発射が行なわれました(いずれも落下推定時刻は、発射推定時刻の10分後)。
 
情報は米軍によってもたらされ、午前3時52分に「早期警戒情報発令」、4時に官邸対策室設置、5時に分析会議開始、6時40分にシーファー米国大使が官邸を訪問、7時27分と11時45分に安全保障会議が開催されました。
6時18分と12時13分に安倍官房長官の記者会見が行なわれましたから、日本政府が「当面の対応」として決定した北朝鮮への措置内容については、皆様もご承知だろうと思います。

自民党本部でも、午後に「国防・外交・内閣関係合同会議」が開催され、内閣官房、防衛庁、外務省から職員が来られておりましたので、疑問点を質すとともに、政府の対応について私自身の率直な意見を申し上げてきました。概要は下記の通りです。


高市; 今後、ミサイルが追加的に発射される予兆は認められるのかどうか?

防衛庁;情報収集に努めているが、追加的発射の有無は分からない。

高市; 今回はロシア沿海州南方の日本海に落下しており、航行中の船舶や 航空機に被害が出たり日本国領土に着弾したりといった事態にはなっていないようだが、追加的に発射された場合、弾道や着弾点の予測はできないのではないか?(つまり、日本領土に着弾することは技術的に予見不可能であるから、事前対応も取れないのではないか?)

防衛庁;弾道ミサイルは、発射した後で軌道を計算しないと着弾点は分からず、また10分間程度で着弾してしまうので、予測は難しい(米国からの早期警戒情報も、着弾より先に来ることは稀である)。

高市; 政府が本日決めた制裁措置(万景峰92号の入港禁止・北朝鮮当局職員の入国禁止・日本と北朝鮮の間のチャーター便乗り入れ禁止)は、部分的発動に過ぎず、弱すぎると思う。もっと厳しく、経済制裁(金融制裁・人道支援凍結)を含めた全面発動措置を取り、北朝鮮が日本の要請(ミサイル開発中止・廃棄・輸出停止)を飲んだら順次制裁解除を行なっていくという方法もあるのではないか。何故、全面制裁ではなく、緩い措置から始めたか?

内閣府;とりあえずは、部分的に制裁を発動して、その後は国連安全保障理事会の対応を見てから・・という判断だったのだろうと思う。 

高市; 今後、追加的にミサイルが発射され、不幸にして航行中の船舶・航空機や日本領土に着弾した場合、日本政府が国民の生命を守るために早急に取るべき措置について、政府内の意思決定は出来ているのか?シミュレーションはしているのか?米軍との連携による国防体制は即応可能な状態にあるのか?

内閣府;「スタディー」としては、存在すると思う。恐らく、武力攻撃態、緊急対処事態という枠組みで対応するのだろうと思うが。「多数の国民が殺傷された、もしくはその可能性がある」という要件もあるので・・。

高市; ミサイル発射実験の場合であっても、航空機や船舶の安全を確保するために事前通告をするのが国際ルールだと思うが、北朝鮮の行為は国際法違反になるのではないか?

外務省;国際海事機構やアイカを通じて各国に通告するのが国際ルール(ガイドライン)だが、北朝鮮は加入していない(ミサイル発射を禁じた条約は無く、米国や日本とのモラトリアム違反というだけになる)。

 
 私の他にも多数の自民党議員が発言を求めておられましたので、政府側とは以上のような短いやりとりしかできませんでしたが、日本の危機管理体制の脆弱さを痛感しました。党本部での会議後、次の各点について私の不安感は増しています。

①着弾点予測不可能な弾道ミサイルが、通告なしに次々と発射されているにも関わらず、実効的な対応手段を持たないこと。「多分、日本領土に打ち込むことはしないだろう」「恐らく、北朝鮮が他国にミサイルを売る為のデモンストレーションだろう」という楽観論に頼って北朝鮮に抗議する以外の手が無いのです。

②日本自前の情報収集能力に限界があること。本日の早期警戒情報も、1発目のミサイルが落下したと推測される12分後に米国からもたらされたものでした。ミサイル防衛システムは今年度末からの配備予定ですから、当面は、米国が日本の危機を見落とさないことを祈るしかないわけです。

③「明らかに日本に対するミサイル攻撃を行なうことが明確で、エネルギー充填などの準備行為が確認された場合は、相手国の発射基地を先制攻撃することも自衛権の範疇」とした石破前防衛庁長官の答弁を記憶していますが、発射後でなければ弾道や着弾点予測が不可能だというのですから、現実的には日本領土内に第一撃を受けた後の自衛権発動になるのだろうと思います。しかし、その場合も、戦略爆撃機や弾道ミサイルも持たない日本が単独で反撃をすることは不可能です。何をするか分からない北朝鮮に関して、日米両国間でどこまでのシミュレーションと作戦の刷り合わせが出来ているのか、本日の内閣官房や防衛庁の回答ぶりでは大いに不安です。

④現在、横田めぐみさんの夫とされる金氏へのインタビューの為、多くの日本の報道陣が北朝鮮に滞在中です。党の部会では、他の出席議員から、「経済制裁の全面発動を行なった場合、マスコミの方々が拘束される事態になるのではないか」という不安の声が上っていました。外務省は「恐らく、そんなことはしないだろう」と答えていましたが、最悪の事態を想定すると、邦人保護の体制が甘いのは否めません。
 イラクでの邦人拘束事件の折も、「危険地域であっても、日本国民の渡航を禁止するのは憲法違反」ということで、渡航制限の法制化もできません でした。
 また、日本の法律では、実効的に邦人を奪還することも認められていません。外交保護権によって相手国政府に邦人保護をお願いするか、相手国政府の要請があった場合だけ警察官派遣をして人質交渉が可能なだけです。北朝鮮のように政府が犯罪に加担しているような国や、軍隊に救出能力が無い国の場合には、日本人の救出は不可能なのです。米軍やドイツ軍が自国民を奪還・保護するような任務は自衛隊法に記されていません。私が以前から主張していることですが、自衛隊法100条8に「邦人保護任務」を追加する法改正をするべきだと思います。国会では反対が多いでしょうから政治的に困難な作業ですが、何とか頑張ってみたいと思っております。

  いずれにしましても、もっと強い制裁措置の発動と日米の綿密な連携によるミサイル迎撃態勢の強化、国連安保理への強い働きかけを日本政府に望みます。

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